最近はマッチングアプリによって出会いを求める人も少なくありません。
そのため、マッチングアプリのプロフィールにどのような情報が書かれていると、人の印象がどう変化するかという点に着目した心理学研究も登場しています。
カナダのフレーザーバレー大学(University of the Fraser Valley)心理学部に所属するショーン・N・ジェニオール氏らの研究チームは、女性たちがマッチングアプリに掲載されるプロフィールや写真を見た時に、どのような人を避ける傾向があるかについて調査しています。
当然ですが女性たちは、プロフィールに攻撃性がにじみ出ているような男性を避ける傾向が見られましたが、その判断に影響するのは男性からすると意外な内容だったようです。
研究の詳細は、2024年4月20日付の学術誌『Computers in Human Behavior』に掲載されました。
女性が潜在的に避けるプロフィールがある
今回の研究チームは、マッチングアプリを介したトラブルに関心を向けており、その中で女性がデートする相手を選ぶ段階で、相手の攻撃性(脅威レベル)に対して、どれほど敏感なのかを調査しました。
この調査では女性172名(平均19.72歳)に架空の男性プロフィールを見せ、マッチングアプリで相手を探す際のシミュレーションを行っています。
参加者たちはまず、一連のアンケートに回答して、デート相手を探す際にどんな傾向を持っているか(刺激を求めるタイプかどうか、また支配欲の強い人に対する好みなど)分析されました。
次に、研究チームが作成した4つの男性の写真付きプロフィールを閲覧してもらい、その男性とデートしたいと思うか、またその男性の脅威レベルや魅力度を評価してもらいました。
この男性のプロフィールは、研究チームが脅威レベルに応じて4段階に分けています。
例えば、脅威レベルの高い男性の写真はしかめっ面にしています。
また、プロフィールには、「後で後悔するよりも今を生きることが大切さ」「稼ぐのは男の仕事で、君には家事に専念して欲しい」「俺は本物の男だ。本物の男は泣かない」などと記載されています。
一方で、脅威レベルの低い男性のプロフィールには、「大切なのは心で、人がどう思っているかなんて関係ない」「家庭を持つなら共働きがいい、ボクは料理や掃除もするよ」「本物の男は泣くものだ」などと書かれていました。
こうしたプロフィールについて、今回の研究チームは女性が被害者となる家庭内暴力などの事件についても関心を向けており、その内容を踏まえて作られているようです。
つまりシミュレーションではありますが、危険なタイプの男性が発するサインがプロフィールに隠されているわけです。
そして実験を行った結果、参加女性たちは、脅威レベルの高い男性プロフィールにきちんと気がついており、それらの男性にほとんど興味を示さないと判明しました。
ジェニオール氏によると、「彼女たちは、プロフィール上の脅威のサインに非常に敏感であり、嫌悪感を抱いているようだった」とのこと。
実際、参加者たちは、しかめっ面の男性の写真が載っていた場合、興味を示す確率が、約57%低下しました。
またプロフィールに、女性への敬意に欠けていたり、性的に見たり、敵対的だったりする文章が載せられていた場合には、興味を示す確率が約81%も低下しました。
これらは当然のように思えますが、「男は泣かない」みたいな強さをアピールしたプロフィールが警戒されるのは面白い結果かもしれません。
これは危険な傾向を持つ男性のサインに女性がどの程度敏感なのかを調べる研究ですが、同時に女性に避けられやすい男性プロフィールを明らかにしているとも言えます。
男性は女性に対してついつい虚勢を張りがちですが、女性たちは、たとえマッチングアプリであっても、相手が自分の強さをアピールしてくると、危害を加えそうな人物だと警戒していることがわかります。
そのためマッチングアプリで相手を探す男性は、なるべく安心感を与えるプロフィールを意識して、あまり虚勢を張らないことが大切なようです。
ただ今回の実験では、全ての女性が同じように反応するわけではないことも分かりました。
退屈するのが嫌いで刺激を求める一部の参加者は、脅威レベルの高いプロフィールを特に警戒せず、嫌悪感を示すこともありませんでした。
こうした女性はトラブルに巻き込まれる危険が高いため、意識的にせよ、無意識的にせよ、男性を選ぶ際に注意する必要があります。
研究者たちはこれは実験室で行った制限のある調査ではあるが、オンラインデートのやり取りには慎重になるよう注意しています。
今後研究チームは、より多様な集団で同様の実験を行うことにより、交際前にトラブルを避ける方法について研究を拡大したいと考えています。
参考文献
Threat perception in online dating: How facial features and biographies impact women’s choices
元論文
Women’s sensitivity to threat in online dating and the (in)effectiveness of standard safety warnings
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。