全国1370店、すべて直営のわけ

 チョコザップが対象に想定しているのは、運動初心者だ。チョコザップを展開するRIZAPグループ広報部の小林大氏は、こう説明する。

「全人口に対するフィットネスクラブやジムに通う人口割合である“フィットネス参加率”は、欧米の約21%に対して日本は約3.3%にすぎません。チョコザップは、普段運動をする習慣がないとか、ジムに通ったことがないとか、ジムに通ったことがあるけれども続かなかったというような方々を対象にして、裾野を広げています。筋トレ上級者や本格的な筋トレをしたい方は対象にしていません」

 店舗によって異なるが、利用者が多い時間帯は昼前後と夕方以降の場合が多く、ビジネスマンやOLが仕事の合間や帰宅途中に立ち寄っているのだ。軽い運動をするジムなので、服装は普段着で対応できるうえに、靴も履き替えずに入店できるため、着替えやスポーツシューズを持参せずにすむ。言い尽くされた経営の定理だが、ピーター・ドラッカーが説いた「企業の目的は顧客を創造すること」を実践して成果を上げたのである。

 店舗数は2024年2月29日時点で全国に1370店。すべて直営である。大手フィットネスチェーンのエニタイムフィットネスやカーブスは、スピード出店の定石であるフランチャイズ展開で店舗網を拡大したが、なぜチョコザップは直営で展開しているのか。小林氏は「チョコザップは常にアップデートをし続けているので、直営の方がそのような変化に対して、スピード感を持って柔軟に対応できるからです」と語る。

 直営でありながら、わずか1年半で一気呵成にこれだけの店舗を出店できたのは、各地のパートナー業者との連携も大きな要因だ。店舗面積は平均30~40坪程度で、コンビニエンスストアと同規模である。立地は駅前や住宅街など、お客様の生活圏内に出店しており、会員の60%が1キロメートル圏内、25%が1~2キロメートル圏内に居住している。商圏規模が小さいので、同社は出店の余地は十分にあると見て、2000件以上の物件を調査中だ。

 成長の原動力になった要因は、それだけではない。例えば、膨大なデータ分析による科学的マーケティングを実施して、260種類以上のLP(ランディングページ)による検証や8600種類以上のバナー広告、560種類以上のチラシを検証した。あるいは会員IDと連動したライフログの蓄積によるパーソナライズ化されたソリューション提案、DX部門の内製化によるナレッジ資産蓄積・開発速度の向上などデジタル化の推進である。

 チョコザップの収支はオープンして1年超は出店コストがかさんで赤字が続いたが、23年11月度から単月黒字を計上して以降は黒字を継続中で、RIZAPグループの通期連結業績の上方修正につながった。

 24年に入ってからは計画的に一時出店を抑制し、マシン修理対応の精度や備品の補充、衛生状態など品質強化に注力して、一時的に踊り場をつくって24年4月以降に再び出店を加速する方針だ。店舗数の目標は26年3月期に2800店、27年3月期に3800店を設定している。その後の目標店舗数は1万店舗だが、この店舗数は郵便局(約2万3000店)、セブン-イレブン(約2万1000店)などに次ぐ規模である。

 RIZAPグループは中期経営計画(23年3月期~26年3月期)に「chocoZAP事業への成長投資集中によりコア事業へ育成」と表明している。新たな収益源として24年2月、チョコザップの経営基盤を活用した商品プロモーションなどを行う「chocoZAP Partners」を開始した。社会課題解決にも着手。兵庫県養父市や三重県木曽岬町など自治体と連携してコンビニジムを出店して住民の健康増進に取り組んでいるが、このような官民連携コンビニジムを、まずは300店舗出店することを目指している。