団塊世代やシニア層が支えてきたガーデニング・園芸市場は近年まで成熟市場と見なされていたが、コロナ禍特需の恩恵に浴して顧客層を拡大した業界の一つだ。矢野経済研究所の調査によると、「3密」を避けられるとして郊外のホームセンターが人気を集めたほか、インテリアとしてのトータルコーディネートを提案するアパレルブランドの参入もあって若年層の新規顧客を獲得した。
ガーデニング市場は世界的にも好調で、Future Data Statsの最新レポートでは2023年に1440億米ドルと推定されている。今後もCAGR6.0%で成長を続けて2030年までには約2000億米ドルに達する見込みだ。
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Image Credits:Kickstarter
緑のある生活に憧れながら、植物をすぐ枯らしてしまうことに悩む「茶色の手」も多いのだ。SmartyPlantsを始めとするスタートアップは、そうした悩みを解決するIoT製品を開発、園芸DXを進めている。
クラファンサイトで人気のガーデニングDX製品3種
開始から16分で目標金額を達成した「SmartyPlants」
上述のSmartyPlantsが開発したのは、同名の植物見守りシステム「SmartyPlants」だ。開始からわずか17分で目標金額を達成、Kickstarter公式の「お気に入り」に選ばれたクラファンプロジェクトは、1300人以上から約2600万円の資金を集めて7月19日に終了したばかり。
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Image Credits:Kickstarter
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Image Credits:Kickstarter
植物の気持ちをEMOJIで表示するスマートプランター「Ivy」
中国・廈門市を拠点とするPlantsIOの「Ivy」は、プランター自体にセンサーとAIを搭載したIoTスマートプランター。2022年にIndiegogoで約2000万円、2023年にMakuakeで約490万円の資金をあつめた。
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Image Credits:PlantsIO
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Image Credits:Indiegogo
大型タンクに水処理システムを備えた「Spring Ipot」は長期間の留守番に
楽しいはずの植物の世話が重荷になるべきではないという思いから、スウェーデン企業PJ Materialが開発したのが「Spring Ipot」である。長期で家を留守にしなくてはならない休暇などの際に活躍するSpring Ipotは、全自動で植物を世話してくれる“植物シッター”。自動水やりはもちろん、環境光・グローライト・Wi-Fi接続などフル機能なAI搭載スマートプランターだ。
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Image Credits:Kickstarter
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Image Credits:Kickstarter
この他にも、種から植物を育てる「Nano Garden」、ハーブやスパイスの植物に特化した「Smart Herb Garden」など、Kickstarterだけでも多数の園芸DX製品がプロジェクトを成功させている。いずれも、テクノロジーの力で「茶色の手」を「緑の手」に変え、誰でも簡単にガーデニングや園芸を楽しめることを目指しているのが印象的だ。
(文・根岸志乃)