日本一の幽霊物件で、再びとんでもないものが撮れてしまったようだ。

 昨年、日本中に衝撃を与えたドキュメンタリー映画『三茶のポルターガイスト』、その続編となる、『新・三茶のポルターガイスト』が6月21日に公開される。

 東京・三軒茶屋の雑居ビルにある俳優養成所「ヨコザワ・プロダクション」のスタジオで現れる“白い手”をはじめとした心霊現象は、観る者に大きな衝撃を与えた。前作だけでも恐ろしすぎる現象が捉えられているのだが、今回の『新・三茶のポルターガイスト』では、はるかにそれを上回る現象が捉えられているという。

 また、今作では物理学者や超心理学者による科学的な検証も行われている。果たして、三茶のポルターガイストとの決着はつくのだろうか。

 今回、TOCANAでは公開に先駆けて豊島圭介監督にインタビューを行い、今作の見どころや心霊現象への考え方などを語ってもらった。

“圧倒的現象”を目の前に中立ではいられない…『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督インタビュー
(画像=撮影:編集部,『TOCANA』より 引用)

――豊島監督が続編となる『新・三茶のポルターガイスト』の監督となった経緯を教えてください。

豊島圭介監督(以下、豊島):今作も当初は前作と同じく後藤さん(後藤剛監督)が監督として定点カメラを置くなど、着々と撮影が進んでいました。劇中にもあるムーの三上編集長と一緒に白い手を見た時も、実は僕は監督ではなかったんです。でもあの時白い手を見てしまって……その時に体験した一連の物語が面白かったのも監督になった理由のひとつです。

――物語というのは?

豊島:あの日、まず角さんと横澤さんのこっくりさんから始まり、その後、横澤さんがひとりこっくりさんをしたんです。「ひとりこっくりさん」ってアリなんだっけ?と思いつつ(笑)、今、霊が台所にいるとか、沼側(舞台)、川側(客席)にいるとかの会話のあと、霊は「川側に行くな」と言ってきました。でも待ちきれなくて川側に行ってしまった三上編集長が白い手を見てギャーッと驚いたのが劇中のシーンです。川側に行くなと言っていた理由は、そこに人が立つと撮れないからという意味にも解釈できますよね。その後、前作でも同じ場所にカメラを据えたらまた撮れたことがあるから、同じようにもう一回トライしようとなり、待ち構えていたところ、本当にみんなの前で白い手が出た、という。そんな一連の物語の流れが面白かったんですよね。

 この物語と、目の前でああいうものが出てしまったという衝撃に僕はヤラれてしまいまして。前作の監督の後藤さんは僕のシャイカー(映像制作会社)時代の上司で良く知っている人なので、後藤さんが監督するにしてもスーパーバイズ的に構成のお手伝いをしようかなと思っていたんです。

 そのタイミングで後藤さんがかなり忙しくなってしまって、千葉プロデューサーからも「だったらもう豊島さんが監督してよ」という話になり、まぁ乗りかかった船だし、これだけの映像を撮れることはそうそう無いと思うので、体験も含めて勿体ないというか、何か形にしたいなという欲が湧いたんですよね。それで監督をやらせてもらうことになりました。

――監督として撮影するにあたって、あの場所の謎を解き明かしたいみたいな気持ちはありましたか?

豊島:どちらかというと謎を解き明かしたいというよりは、もっともっと現象を撮りたいという感じでしたね。あの白い手を見た時、感動したんです。崇高なものと出会ったみたいな気持ちといいますか、「僕たちが今まで生きてきたこの世界は何だったんだろう」みたいな気持ちになりました。

――そもそも幽霊のような存在を信じていましたか?

豊島:僕は“どう名付けるかはわからない派”といいますか、論理的に説明できないことだったり、不思議なことだったり、不思議な存在だったりはあると思っています。ただそれらの区別は実はなくて、ある人はそれを幽霊だと思い、ある人はそれを妖怪だと思い、ある人はそれを宇宙人だと思い、のようなことがあるんじゃないかと思っています。

 日本では白装束の幽霊も西洋ではドレスを着ていたりと、文化的土壌が見たものの解釈に反映することはあるでしょうから。という意味では、幽霊は信じるけど、UFOは信じないみたいなこともなかったですね。

 ただ、不思議なものはあるんだろうなと信じることの中にヨコザワ・プロダクションの怪異も含まれているわけです。色んな人たちが話題にして、映画にもなるくらい撮れ高があって、そういうものはあるんだろうなと思っていましたが、そういうものを「信じる」ということと、いざ実際に自分の目でそれを「見る」こととの間には大きな溝があって、見てしまうとある種の宗教体験のようなとてつもない衝撃を受けました。

“圧倒的現象”を目の前に中立ではいられない…『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督インタビュー
(画像=完成披露上映会にて 撮影:編集部,『TOCANA』より 引用)

――私も一度だけヨコザワ・プロダクションに伺ったことがあるのでなんとなくわかります。誰もいないはずなのにトイレのドアをノックされたり、お線香の匂いがしてきたり、鈴の音や奇妙な声が聞こえたりと、理解できない体験の連続で頭がバグりかけました。

豊島:そう、頭がバグるんですよね。普通の心霊スポットだったら「声のようなものが聞こえたかな?風の音かな?気のせいかな?」とかのレベルのものがほとんどだと思うんですが、ヨコザワ・プロダクションの場合は、絶対に“何か”があるんですよね。

――今作ではそういった現象の数々を客観的に見せていくという姿勢だったのでしょうか?

豊島:どちらかというと前作が、「こんなに面白い現象が起こる場所が現代の日本の東京のど真ん中にあるんだよ」という紹介的な要素の強い映画だったと思うんですけど、今回、僕が関わったときには、角さんやプロデューサーの方針で科学者を呼ぼうということにはなっていたので、まずそれに対してどのように対応していくかということを考えていきました。

 そして僕としては「もっと凄いものを撮りたい」という思いと同時に、「科学者の人たちがどう出るのか」ということに興味がありました。意外と最初は科学者の方は寄り添ってくれるのかなと思っていたんですが、“12人目の男”の映像が撮れたあたりから「これは演出である」といった感じで態度が変わってしまったんです。でもお陰で映画が面白くなったとも思います。

――そのあたりも見どころのひとつといったところでしょうか。

豊島:そうですね、肯定派、否定派、両者の言い分を聞きつつ、視聴者に判断を委ねられるような映画にしたいなとは思いました。でも最初に見てしまった白い手の衝撃がやっぱり強すぎて、本編最後の天井から出てくる衝撃映像もそうですが、否定のしようがないんです。最後の映像部分に関しては自分の目では見ていないので肯定もできないんですけど、あれをCGや特殊造形などの人力で作る場合、その労力、予算、造形の才能、デザインのセンスが人並外れてると思うんです。

――確かに最後の天井からの映像は、ただ気持ち悪いだけじゃないですよね。

豊島:そうでしょう?あれを考えろといって考えられるデザイナーはなかなかいないと思うんですよ。なので、あれを「こんなものはCGでできる」と簡単に言ってしまうことのほうが浅はかに思えてしまいます。もちろんCGアーティストにああいったものを見せて再現しろと言ったらできるはずなんですけど、ああいったものをゼロから考えつくセンスがあるとすれば、その人は相当の才能の持ち主です。

 結局、中立であろうとはしたんですが、圧倒的な存在を目の当たりにして、中立ではいられないというのが、僕の現状ですかね。

“圧倒的現象”を目の前に中立ではいられない…『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督インタビュー
(画像=©️2024 REMOW,『TOCANA』より 引用)

――ダンサーの後ろに現れた12人目の男についてお聞きしたいのですが、監督としてはどんな印象を受けましたか?

豊島:あの12人目の男の存在自体も気持ち悪いんですが、特にお面が生成AI画像みたいな感じで気持ち悪いんですよ。つまり純粋なコピーではない、歪んだコピーなんですよね。生成AI画像だと人間の手の指が6本とかになることがあるじゃないですか、あれに近い感じがするんです。

――私も生成AIをよく利用するんですが、似たものはできても思ったとおりにはならないというか、近いものは感じますね。あと12人目の“男”とされていますが、私には女性に見えました。

豊島:確かに女性に見えるという人もいるんです。胸があるように見えるとか、体のラインが丸いとか。映画が公開されたらそういう意見がもっとたくさん出てくるかもしれませんね。

――白い手などの存在を実際に見たり、他にも様々な現象を体験して、制作陣の中で普段の生活に何か影響があった方はいなかったのでしょうか。

豊島:撮影や編集をしてくれたりする若いスタッフがいるんですが、彼は時々、首や頭がズーンと重くなることがあったようで、撮影後は毎回お祓いに行っていたみたいです。でもあの場所に行った後に家で金縛りに遭って見知らぬ人が立っていた、みたいな王道の心霊体験みたいなものは聞かないですね。なので、実は幽霊じゃないんじゃないの?とも想像してしまいます。

――わかります。これは個人的な妄想レベルの話でしか無いのですが、ヨコザワ・プロダクションに現れる白い手をはじめとした現象には、なんとなく人間を感じてしまうことがあります。例えば遠い未来の人が悪ノリで昔の人をビビらせている、みたいな。

豊島:悪ノリという感覚は僕もわかります。もしかしたら向こうは凄く精神年齢が低いのかもしれませんね。僕としては銀河の彼方から来た存在かな?なんて思うこともあります。映画『インターステラー』で父親が本棚の裏から娘を覗くシーンのような雰囲気を感じてしまったりもしますね。

“圧倒的現象”を目の前に中立ではいられない…『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督インタビュー
(画像=撮影:編集部,『TOCANA』より 引用)

――監督としてはどういった層の人に特に観て欲しいなどはありますか?

豊島:納涼、夏休み映画というわけではないですけど、ワーキャー言いに来て欲しいというのはありますね。ただワーキャー言うには怖すぎる気がしないでもないです。ただ、「面白かったけど怖くなかったです」と言っている人もいて、ああ、なるほどな、と思いました。いわゆる怖い怖いの脅かしの連打がある映画ではないんですよね。怖がらせようということと、検証するということとのバランスは難しかったかもしれません。

 ただ玄人にも素人にも喜んでもらえる映画にはなっている気はします。「結局ニセモノじゃん」という結論になってしまっても構わないというか、間口が広いドキュメンタリーになっていると思います。そして『映っている現象が凄い』『それに関わる人達が面白い』この2つのポイントは確実だと思うので、その魅力が伝わるといいなと思っています。

――少し気が早いかもしれませんが、続編は制作されるのでしょうか?

豊島:今作をきっかけに、「やっぱり三茶のポルターガイストで起きている現象は科学的に否定できないのでは」という声が大きくなったら、いずれ続編は作られるかもしれませんね。

――今作を通して視聴者に伝えたいことはありますか?

豊島:やっぱり不思議なこと、オカルト的なこと、常識外のことは人をワクワクさせると思うんです。三茶のあの場所では、現代では珍しい日常と地続きの場所でとてつもなくワクワクすることが起きています。映画ではそれを捉えていると思うので、是非劇場に観に来てほしいですね。信じても信じなくてもいいので、友達と一緒に観て、ホントだ、ウソだと一晩飲んで欲しいです。考察のしがいもあると思いますし、大きなスクリーンで観たらもしかしたら腰を抜かすかもしれません。

――最後にTOCANA読者に一言お願いします。

豊島:この映画のハイライトのひとつはTOCANA総裁のへっぴり腰っぷりですね。あんなにビビった角由紀子はこの映画でしか観られないと思います。

“圧倒的現象”を目の前に中立ではいられない…『新・三茶のポルターガイスト』豊島圭介監督インタビュー
(画像=『TOCANA』より 引用)

『新・三茶のポルターガイスト』
2024年6月21日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、
新宿シネマカリテ他 全国ロードショー!
監督:豊島圭介
出演:角由紀子/横澤丈二/小久保秀之/山崎詩郎/児玉和俊/ひなたまる/森脇梨々夏/三上丈晴/小野佳菜恵/大久保浩/オカルトセブン7★
ナレーション:東出昌大
企画・プロデュース:角由紀子、叶井俊太郎/プロデューサー:千葉善紀、佐藤慎太朗/宣伝プロデューサー:星野和子
音楽:スキャット後藤/撮影・編集:滝田和弘/ビジュアルデザイン:廣木淳
エンディング・テーマ「水底の愛」:横澤丈二
製作:REMOW/制作プロダクション:murmur/配給:エクストリーム
2024 年/日本映画/88 分/カラー/ステレオ/DCP
©️2024 REMOW

豊島圭介
映画監督。東京大学教養学部表象文化論専攻卒業。『怪談新耳袋』(2003年)で監督デビューし、アイドル、ホラー、恋愛もの、コメディとジャンルを横断した映画・ドラマに携わる。2020年公開の『三島由紀夫vs東大全共闘 ~50年目の真実~』で初のドキュメンタリーの監督を務める。代表作に、映画『ソフトボーイ』『花宵道中』『森山中教習所』、『ヒーローマニア -生活-』『妖怪シェアハウス ~恋しちゃったん怪~』(2022)など。ドラマ「怪奇大家族」、「マジすか学園」シリーズ、「CLAMPドラマ ホリック xxxHolic」、「Is” アイズ」、「イタイケに恋して」など。近作にドラマ「書けないッ!? ~吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(2020)、「妖怪シェアハウス」シリーズ(2020 – 2022)等がある。

文=渡邊存瀰

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提供元・TOCANA

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