一方、ホスト国ドイツではユーロ2024が国民経済を活性化させることを期待している。ユーロ2024の経済効果だ。同国は昨年リセッション(景気後退)に悩み、今年に入ってようやくプラス成長となったとはいえ、物価の高騰、エネルギー・コストの急騰などで消費者の購買意欲は停滞している。ドイツ連邦統計庁によれば、今年第1四半期の国内総生産(GDP)は前期比(季節調整後)で0.2%増だったが、依然厳しい。2006年のドイツ開催のサッカーワールドカップ(W杯)ほどではないとしても、ユーロ2024は小売、ケータリング、宿泊施設などの消費者関連の経済部門を回復させるチャンスでもあるわけだ。
欧州サッカー選手権はワールドカップ(W杯)に次いでビッグイベントだ。24チームが6グループに分かれ、グループ戦が行われ、グループ上位2位と各組3位のうち成績上位4チームがラウンド16に進出し、欧州最強の座をかけて本戦に入れる。前回2021年のロンドン主催の欧州選手権ではイタリアが決勝戦でイングランドに3対2で勝って2度目の欧州王者となった。
ドイツはかってはサッカー強国と見られ、ブラジル、フランス、イングランドと並ぶサッカー王国だったが、前回のカタールで開始されたW杯ではグループ戦で3位となり、本戦にも行けず早々と帰国した。ドイツチームはビッグイベントの試合では最近は悉くファンの期待を裏切ったため、「サッカー王国」から「世界のサッカー界のBチーム」と酷評されてきた。それだけに、ホスト国となった今回は健闘を期待しているファンが多い。ただし、英国のブックメーカーによると、ドイツの優勝を予想する声は少ない。逆にいえば、期待されていない分、気楽に試合に臨めるというメリットがある。若い選手が多いだけに、思い切ってプレイできれば結果も期待できる(「『サッカー王国』ドイツのW杯予選落ち」2022年12月4日参考)。
なお、優勝有力候補は前回のW杯の覇者フランスを筆頭に、イングランド、スペイン、フランスといったところだろうか。当方が住んでいるオーストリアはDグループでオランダ、ポーランド、フランスといった強豪が相手だけに予選通過は大変だ。ただし、各国チームの実力は拮抗しているので、勢いに乗ったチームが予想外の活躍をするのが欧州選手権だ。参加国の選手の活躍と安全を願う。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年6月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。