カーオーナーのなかには、日常的な点検や整備をプロに任せず、自分自身で済ませている人もいるでしょう。DIYは愛車の状態を知っておくうえで重要な習慣である一方、知識がない状態で手をつけてしまうと、思わぬ故障やトラブルにつながるケースもあるようです。

今回は自動車整備を扱うショップのオーナーやスタッフから、「DIYの失敗で持ち込まれてきた車両」について話を聞きました。

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合わない工具でネジが回せず…

合わない工具でネジが回せず…

結局プロに任せるのが一番確実で安上がり?整備のプロに「DIYに失敗して…」と持ち込まれた車によくあるパターンを聞いてみた
(画像=©Taras Maksimenko/stock.adobe.comwrench and auto repair 、『MOBY』より 引用)

DIYをするうえで、まず揃えておきたいのが「信頼できる工具類」です。整備工場には用途に適した工具が揃っているのに対し、DIYにおいては精度の低いものや用途に合わないものが用いられることがあり、それがトラブルの原因になることもあるといいます。

「一番よくあるのは、ネジやナットの山を潰してしまうケースですね。合わない工具で作業したために、角が潰れてしまい、回せなくなってしまったと。

これだけなら費用もあまりかからないのですが、厄介なのがタイヤ交換でインパクトレンチを使い、失敗してしまうケースです。電動でナットを締められるインパクトレンチは便利なんですけど、使い方を誤ると過度な力で締めつけることになりますから、車体側のハブボルトの方が破損してしまう可能性もあるんですよ。

過去にはホイール1本分、4本のハブボルトを全部壊してしまった方もいましたね。修理費用自体は2万円程度だったかと思いますが、レッカーを使ったのでそっちの方が高くついたみたいです。

タイヤ交換は単純な作業ですけど、横着せずにトルクレンチを使うことをお勧めします」(整備工場スタッフ・勤務歴7年)

車をジャッキアップできる環境さえあれば、タイヤをホイールごと交換する作業はそう難しいものではなく、DIYで済ませている人も多いでしょう。しかし、ホイールナットを取りつける際には「締めつけトルク」を基準値の範囲に収めることが大切です。

十字レンチや電動のインパクトレンチだけでは、適正トルクから外れてしまう可能性がありますので、締めつける力を固定できるトルクレンチを用いることが推奨されます。

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車を持ち上げるジャッキアップ、死亡事故にもつながる危険も

車を持ち上げるジャッキアップ、死亡事故にもつながる危険も

結局プロに任せるのが一番確実で安上がり?整備のプロに「DIYに失敗して…」と持ち込まれた車によくあるパターンを聞いてみた
(画像=@Kumi/stock.adobe.co、『MOBY』より 引用)

車の整備をするうえで、基本になるのが「ジャッキアップ」の作業です。車体を持ち上げることにより、タイヤ交換をはじめさまざまな作業が可能になりますが、不適切な方法により落下事故が起きるケースもあり、細心の注意が必要です。

「初歩的なところだと、ジャッキアップポイントを間違えて車体を落下させてしまう、というケースには何度か遭遇したことがあります。

タイヤを交換する際、車載のジャッキアップだけを使って、車体を支えるウマを使わず、しかもポイントも違っていたとか。足を挟んでしまって、骨折したという人もいました。

もちろん車体へのダメージもハンパじゃありません。持ち上げている状態からガクンと地面に落ちるわけなので、サイドシル(ドアの敷居部分)までグシャッと潰れたりとか。板金で数十万かかるケースもありますし、潰れ方によってはフレームまでダメージがいって修復歴がついてしまうので、めちゃくちゃ大きな代償を払うことになります。

作業中に挟まれたら死につながる危険もありますし、車体を持ち上げるときは細心の注意を払ってほしいなと思います」(板金工場オーナー・勤務歴21年)

ジャッキアップの際には、まず平坦で地盤の安定した場所を選ぶことが必須です。周囲の安全を確認し、車のエンジンを止めてパーキングブレーキをかけたうえで、車体のジャッキアップポイントを正確に持ち上げる必要があります。

さらに落下を防ぐためには、「ウマ」と呼ばれるリジッドラック(ジャッキスタンド)を併用することが求められます。ジャッキアップは死亡事故につながるケースもあるため、危険性を十分に認識したうえで、正しい方法で実施することが大切です。

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数千円の製品でエンジンがオシャカに?

数千円の製品でエンジンがオシャカに?

結局プロに任せるのが一番確実で安上がり?整備のプロに「DIYに失敗して…」と持ち込まれた車によくあるパターンを聞いてみた
(画像=©malkovkosta/stock.adobe.com、『MOBY』より 引用)

DIYで部品を交換する場合には、取りつける部品も自身で選ばなければいけません。しかし、同じ箇所の部品でも車種によって規格が異なるため、誤って適合しない製品を選んでしまうと大きなリスクにつながります。

「DIYのトラブルとしては、本来その車には適合しない部品を取りつけてしまい、不具合が出るケースもよくあります。作業が簡単な割にダメージが大きかった例だと、スパークプラグの交換ですね。

プラグはエンジンを点火するためのパーツですが、大きくショートプラグとロングプラグがあるんですよね。ショートプラグを採用している車に無理矢理ロングプラグをつけてしまうと、エンジンのピストンと干渉してしまい、かなり大きな故障につながることがあります。

過去にあったのは、車の年式を間違えて違う種類のプラグを選んでしまい、それが原因でエンジンがかからなくなってしまったケースです。古めの車でしたが、リビルドエンジンへの載せ替えで10万円以上かかってしまうので、結局廃車にして買い替えを選択されていましたね」(整備工場スタッフ・勤務歴13年)

近年はエンジンルーム内へのアクセスが難しい車種も増えていますが、多くの場合スパークプラグはエンジンカバーを外せばすぐに交換作業に取りかかれるため、DIYで挑戦する人も少なくないと考えられます。

しかし、上のような規格の違いのほか、プラグが傾いたまま取りつけたことによる破損や、締めつけトルクの過不足によるトラブルなど、注意すべき点は数多くあります。エンジンに不具合を生じさせるリスクもあるだけに、DIYの際には下調べと準備を入念にしてから取りかかるようにしましょう。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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