生命保険は、解約返戻金のある商品とない商品に分けられる。解約返戻金がなく保障が充実している商品もあるが、貯蓄性が高く解約が前提となっている商品もある。生命保険の解約返戻金について知り、資産形成などに活用してほしい。
生命保険の解約返戻金とは?
解約返戻金とは、生命保険を解約した際に戻ってくるお金のことだ。保険料から保険金の支払いに充てられる金額や保険契約の締結や維持に必要な経費を差し引いた部分が、解約返戻金として積み立てられる。契約途中で解約した場合は、解約返戻金が払い込んだ保険料の合計を下回ることもある。
生命保険は解約返戻金のある商品とない商品に分けられる
生命保険は、保障を重視した商品と貯蓄を重視した商品に分類される。一般的に、保障を重視した商品には解約返戻金がなく、貯蓄を重視した商品は解約返戻金が多いとされている。それぞれの特徴を理解しておくことが重要だ。
解約返戻金がない掛け捨て型の生命保険
定期保険に代表される掛け捨て型の生命保険は、解約返戻金がないか、あっても少額のことが多い。定期保険は一定期間の保障を確保することが目的のため、払い込んだ保険料のほとんどが保険金の支払いに充当される。つまり、解約返戻金として積み立てられる部分がほとんどないのだ。その分、安価な保険料で大きな保障を確保できることが掛け捨て型のメリットと言える。
具体的な商品としては、定期保険(死亡保障)、定期型の医療保険やがん保険などがある。
解約返戻金が多く貯蓄性の高い生命保険
貯蓄性の高い生命保険は、保険期間満了まで長期間にわたり保険料を積み立てていく。保険料払込期間満了時には、解約返戻金が払込保険料の総額を上回ることが多いのが特徴だ。終身保険や学資保険、個人年金保険などが貯蓄性の高い商品として挙げられる。
終身保険の中には、保険料払込期間中の解約返戻率を通常の約70%に抑えた「低解約返戻金型終身保険」もある。解約返戻金を抑えることで、通常の終身保険よりも安い保険料を実現している。終身保険ではあるが、契約から一定期間は解約返戻金が一般的な終身保険より少額となるため、契約時に詳細を確認しておこう。
貯蓄性の高い商品でも、契約期間中に解約すると解約返戻金が払込保険料の総額を下回る可能性がある。解約返戻金の目安が保険証券に記載されている保険会社もあるので参考にしよう。
生命保険の解約返戻金に税金はかかるのか
生命保険の解約返戻金を保険料の負担者が一括で受け取った場合、一時所得として所得税の対象になる。どのような場合に税金がかかるのか、計算方法とともに確認しておこう。
一時所得の計算方法は?
一時所得は以下の式で求められる。
一時所得の金額=解約返戻金-払込保険料の総額−特別控除額(50万円)
ポイントは、50万円の特別控除がある点だ。解約返戻金と払込保険料の総額の差から50万円が控除されるので、差が50万円以下の場合は一時所得は0円となる。仮に払込保険料の総額が1,000万円の場合、解約返戻金が1,050万円以上でないと所得税は課税されない。
払込保険料より解約返戻金が多い場合は注意
以下のようなケースは所得税の課税対象になる可能性がある。
- 払込保険料よりも解約返戻金が50万円以上多い
同じ年に解約返戻金以外の一時所得がある
とりわけ、高利回りの時期に契約した貯蓄性の高い保険を解約する場合は注意が必要だ。現在より予定利率が高く設定されているため、解約返戻金が払込保険料を大きく上回る可能性がある。
同じ年に一時所得が複数ある場合は内部通算され、以下の式で求められる。
その年の一時所得に係る総収入金額-その収入を得るために支出した金額の合計額-特別控除額(50万円)
年金形式で受け取る場合は雑所得
契約によっては、解約返戻金を年金形式で受け取れる場合がある。一括で受け取った場合は一時所得だが、年金形式の場合は雑所得となる。雑所得は、給与所得や一時所得など他の9種類の所得に分類されない所得で、具体的には公的年金や原稿料などがある。雑所得は以下の式で求められる。
総収入金額-必要経費=公的年金等以外の雑所得
雑所得は控除がないので、一括で受け取る場合よりも多く課税される可能性がある。
生命保険の解約返戻金が支払われるタイミング
解約返戻金は保険会社にもよるが、概ね1週間以内に振り込まれることが多い。
- アフラック生命……解約請求書が到着した翌日から起算して、土日祝日を除いた5日間以内
- 第一生命……手続き完了後、銀行口座(ゆうちょ銀行除く)の場合は2営業日後、ゆうちょ銀行の場合は3営業日後
住友生命……書類が到着後、1週間程度で送金
書類に不備がある場合などはさらに日数を要するため、あくまで目安と考えておくといいだろう。
解約返戻金を見据えた生命保険の加入も検討しよう
貯蓄性の高い商品には学資保険や個人年金保険もあり、教育費や老後資金の確保に有効な手段だ。払込保険料より解約返戻金が多い場合でも、その差が特別控除の50万円を上回らなければ課税されない。解約返戻金がどのくらい増えるかを考えて生命保険に加入することも、資産形成の選択肢の一つなのだ。
文・MONEY TIMES編集部
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