街の喧騒を離れて静かな場所でゆっくりしたいと思う時があるかもしれないが、ギネスで認められた「世界で最も静かな部屋」に入れば、その考えを改めることになりそうだ。そこでは自分の身体が最大のノイズ発生源なのだ――。

■「世界で最も静かな部屋」で過ごすとどうなるのか?

 江戸川乱歩の短編小説『鏡地獄』では、内部が球体の鏡張りの部屋に入った男が発狂してしまうという不気味なストーリーが綴られているが、ではビジュアルからサウンドに転じて、完全な静寂に包まれる部屋に入ったらどうなるのだろうか。

 米ミネソタ州ミネアポリスのオーフィールド研究所には、「世界で最も静かな部屋」としてギネス世界記録に認定されている無響室(anechoic chamber)がある。この部屋は、音を約99.9パーセント吸収すると言われている。

 平均的な部屋の夜間の騒音レベルが約30デシベルであるのに対し、オーフィールド研究所の部屋はなんと-20デシベルである。

 無響室は6面の鋼鉄製二重壁の箱で、厚さ12インチのコンクリートとさらに何層もの鋼鉄で覆われている。床は振動を吸収するバネで支えられており、不気味なほど静かな部屋にわずかな音も入り込まないように設計されている。また、反響を減らすため、大きなグラスファイバーの塊が壁に沿って挟み込まれている。

あなたは耐えられる?体を流れる血液の音が聞こえるほど“地球上で最も静かな場所”とは
(画像=画像は「YouTube」より,『TOCANA』より 引用)

 スティーブン・オーフィールド氏が設計したこの部屋は、主に実験や製品の騒音測定に使用されているのだが、近年、自分の身体の内部の音を聞きたいという好事家たちの間で、意外な観光名所になっているという。

 完全な静寂の中で過ごすことは、日常生活の喧騒から逃れて爽快な気分転換になると思うかもしれないが、物音ひとつしない静寂は不安な気持ちにさせるといわれている。

 この無響室に入ると、来訪者は自分の骨が発する軋みや擦れる音、臓器が活動する音や心臓の鼓動、体内を流れる血液の音さえ否応なく聞かされ、すぐに耐え難くなって部屋を出ることになるという。

 オーフィールド氏は「私たちは、参加者に暗闇の中で室内に座るよう求めます。静かな環境では、耳が慣れてきます。部屋が静かであればあるほど、聞こえるものが増えます。心臓の鼓動が聞こえ、時には肺の音が聞こえ、お腹がゴロゴロ鳴る音が聞こえます。無響室では、自分自身が音になります」と説明する。

 オーフィールド氏によれば、無響室に入ると方向感覚が喪失し、部屋の中でバランスを崩し立っていられなくなるという。30分ほど過ごすつもりなら椅子に座らなければならず、オーフィールド氏自身も無響室にいるのは45分が限界であるということだ。

 しかし完全なる静寂は需要が高く、同氏は研究所には今でも世界中から部屋に入りたいとのリクエストが殺到しているという。

 あるユーチューバーは、なんと1時間26分もの間、この部屋の中で過ごすことができたが、その最中に幻覚を見はじめたと語っている。

 このように良い話は聞かないが、それでも自分で確かめてみたいという向きはこの部屋へのツアーを予約することができる。

 ただしツアー代金を知ると再考を求められそうだ。部屋に入るには、1時間あたり1人600ドル(約10万円)である。これが高いのが安いのかその人次第ということになるだろうか。

参考:「LADbible」ほか

文=仲田しんじ

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提供元・TOCANA

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