Netflixで実写化もされ、注目を集めているONE PIECEですが、作品の中に登場する海賊、黒ひげ(マーシャル・D・ティーチ)のモデルとなった海賊が実在していたことはご存知でしょうか。

その名は「エドワード・ティーチ」

17世紀から18世紀初頭にかけて、カリブ海や大西洋沿岸を荒らし回った悪名高き伝説の大海賊です。

そんな黒ひげが乗っていた海賊船「アン女王の復讐号(Queen Anne’s Revenge)」は、1996年に海底から発見され、考古学者たちが調査を続けています。

船からはこれまでに数多くの遺物が回収されていますが、その中でも目を引くのが、船医が病気の海賊たちに使用したと思われる、医療器具の数々です。

しかし、これらは普通の医療器具だけではありませんでした

中には今のように医療が進んでいなかった時代ならではの、ゾッとするような医療器具が含まれていたのす。

一体、どのようなものだったのでしょうか。

黒ひげ「エドワード・ティーチ」とは

カリブの大海賊「黒ひげ」は、本名をエドワード・ティーチといい、17世紀から18世紀初頭の海賊黄金時代を代表する存在として知られています。

ティーチは背が高く、引き締まった体格の男で、豊かな黒いアゴ髭を持っていたとされ、その髭にはくすぶる導火線を織り込んでいたとも言われており、その非常に特徴的で恐ろしい容姿が「黒ひげ」という異名の由来となっています。

黒ひげは多くの商船や奴隷船を略奪し、その悪名を轟かせました。

しかし、1718年にイギリス海軍との戦闘中に命を落とし、黒ひげは海賊史に名を刻むこととなったのです。

「海賊黒髭」1725年発行の『海賊史』での挿絵
「海賊黒髭」1725年発行の『海賊史』での挿絵 / Credit:ja.wikipedia

意外な要求「医療品」

黒ひげは略奪を行う中で、アメリカ・ノースカロライナのチャールストン港を封鎖し、人質をとって町に要求を突きつけたことがありました。

海賊の要求となれば、お金やお酒のイメージがありますが、黒ひげが要求したのは意外にも「医療品」だったのです。

海賊がかかりやすい病気といえばONE PIECEでも扱われた「壊血病」が有名です。

壊血病はビタミンC不足による疾患で、症状には歯肉や皮膚からの出血、関節痛などがあり、重症の場合は死に至る恐ろしい病気です。特に長期の航海で新鮮な果物や野菜を摂取できないときに発症リスクが高まります。

レモンやライムなどの柑橘類を食べるという簡単な治療法が見つかるまで、壊血病は海賊たちを震え上がらせていた病気でした。

壊血病以外にも栄養状態の悪さから、さまざまな健康上の問題を引き起こしていたと考えられます。

また、汚染された飲料水や不衛生な環境から、赤痢にかかったり、熱帯や亜熱帯地域を度々訪れていた海賊たちは、蚊を介して感染するマラリアや黄熱病にかかることもあったようです。

そして、海賊たちは港町で夜の楽しみに耽ることが多く、その結果、海賊たちの間では性感染症、特に梅毒が一般的になっていたと考えられています。

黒ひげにとってこれらの病気を治療する医療品や医療器具は、お金やお酒などよりも重要なものだったのかもしれません。

しかし、医療が進んでいなかった当時の医療器具の中には、恐ろしいものもありました。