まるでSF映画かホラー映画のような手術が計画されています。

それは、「ロボットを使って、人間の頭部全体を別の人間の身体に移植する」という恐ろしいプロジェクトです。

スタートアップ企業「BrainBridge」の宣言が本当なのであれば、ロボットによる頭部移植は、10年以内にどこかの病院で実施されるかもしれません。

ロボットによる頭部移植が10年以内に計画されている!?

ベルリンを拠点とする分子生物学者であり、映画製作者、科学コミュニケーターとしても活動しているハシェム・アルガイリ氏は、2022年に驚くようなコンセプトムービーを公開しました。

それは、「大量の人工子宮装置で赤ちゃんを育てるベビーファーム」の映像です。

現在では、そのようなベビーファームの実現は、科学的にも倫理的にも難しく、多くの人は、1つのSFムービーとして捉えました。

分子生物学者が人工子宮装置を使った「ベビーファーム」のSF動画を公開

そのようにして注目を集めたアルガイリ氏は、最近、彼のスタートアップ企業「BrainBridge」を通して、新たなプロジェクトを提案しました。

それは、ロボットを用いた人間の頭部移植手術です。

(人間の胴体移植と言った方が正確かもしれません)

ロボット手術システムを用いて、ある人間の頭部を、別の人間の身体に移植するというのです。

まるでSFのような移植プロジェクトを発表
まるでSFのような移植プロジェクトを発表 / Credit:Hashem Al-Ghaili(Youtube)_Head Transplant Machine – BrainBridge(2024)

彼らが公開したコンセプトムービーによると、多数のロボットアームが頭部を切り離して新しい胴体に取り付け、脊髄・神経・血管を接続しています。

この計画についてアルガイリ氏は次のように述べています。

「これは、高度なロボット工学と人工知能を統合し、頭部の移植手術を実行するものです。

この最先端のシステムは、ステージ4の癌患者、麻痺・アルツハイマー病・パーキンソン病など治療不可能な症状に苦しむ患者に新たな希望をもたらします」

確かに、首から下の身体を全て入れ替えることができるならば、臓器をはじめ体中の疾患や問題を一気に解決できる可能があります。

また神経を繋ぎ直す高度な移植手術が可能になるならば、麻痺患者の治療に活かせる可能性もあるでしょう。

アルガイリ氏は「10年以内の実現」を目指しているようですが……
アルガイリ氏は「10年以内の実現」を目指しているようですが…… / Credit:Hashem Al-Ghaili(Youtube)_Head Transplant Machine – BrainBridge(2024)

驚くことにアルガイリ氏は、この計画について10年以内に最初の手術を実行したいと述べており、それまでの間に、この手術を可能にするトップクラスの人材を集める予定だと語っています。

では、このような手術は医学的に可能なのでしょうか? しかし現在のところこの計画に対して医学界からのコメントはありません。

この計画を耳にした多くの人も、不可能だと感じることでしょう。

実際BrainBridge社のサイトでも、このアイデアが構想段階であることを強調しています。

頭部移植は古くからホラー小説や、SF作品で提案されてきたアイデアであり、この技術については過去にたびたび実現させると宣言した人は存在しています。

ただそうした主張はまだ一度も実現していません。

現段階では、公開された動画も1つのSFムービーとして捉えた方がよさそうですが、アルガイリ氏がこのプロジェクトをどのように進展させていくのか気になるところです。

参考文献

Video: Head transplants performed by robots planned within the decade

HEAD TRANSPLANT SYSTEM

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部