動物実験の一般化可能性(人間も同じ結果になるのか?)

得られた結果は、研究グループの立てた仮説を支持するもので、激しい運動で期待した効果が得られない理由を説明する一因になる可能性があります。

ただし、この研究は動物実験のため、得られた結果をそのまま私たち人間に適用するには限界があります。

研究グループも、人間を対象とした場合、運動後の活動量に対する反応が遺伝的背景、社会的背景、生活条件、食習慣、その他の日常生活の活動などのノイズになる要因が多いため、条件をコントロールしやすい動物実験を用いたとしています。

このアプローチは、運動がその後の活動量に及ぼす影響のメカニズムを明らかにするために有効な一方で、見方を変えると、人間の場合、運動後の日常生活の活動が色々な影響を受けることを意味しています。

激しい運動をするとその後の日常生活の活動量が減るかもしれない
激しい運動をするとその後の日常生活の活動量が減るかもしれない / credit: 写真AC

それを踏まえても、今回の研究成果は運動の効果が運動後の活動量にも及ぶことを示した貴重なデータです。

激しい運動をして、EPOC(激しい運動後にエネルギー消費が高まる効果)が得られたとしても、それ以上に日常生活の活動量が減ってしまえば、その効果は打ち消されてしまいます。

運動を頑張りすぎて日常生活への支障を感じる人は、心地よい運動にとどめておくことで、運動と生活活動の足し算である身体活動の総量を高めることが出来るのかもしれません。

参考文献

一度の激しい運動がその後の身体活動量と体温を下げ体重を増やしてしまう

元論文

Acute Vigorous Exercise Decreases Subsequent Non-Exercise Physical Activity and Body Temperature Linked to Weight Gain

ライター

ナゾロジー編集部

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。