女性を含むすべての人が働きやすい環境へ

ーフェムアクションへの取り組みを始めてから、女性ならではの課題が可視化されたと感じていますか。

女性ならではの問題は存在しますが、Fellneが目指すのは「女性活躍」を超えて「多様性を受け入れる」ことの第一歩としての取り組みです。フェムアクションと聞くと、性別で分けて考えるべきではない、という意見があるかもしれません。しかし、現実には育児や介護を担う割合は女性のほうが多いという背景があります。

そのため「女性が活躍しやすい環境」という表現が使われるのだと思います。ですが、本質的にFellneは女性をはじめとするすべての従業員にとって、働きやすい環境を目指しています。

ーすべての人にとって働きやすい環境とは、具体的にはどのようなことを指しますか。

例えば、男性の育児休暇取得や介護休暇・休業取得の推進があっても良いと思っています。また、性別に関係なく昨今ではアルツハイマーの増加なども問題視されており、個々の能力を生かして働ける環境づくりが必要です。

現状、最も身近で実現しやすいのは、女性が働きやすい環境を整えることであり、それがほかの人々にとっても柔軟な働き方を可能にする環境づくりの一歩となると考えています。つまり、多様性の受け入れを広げるための出発点として「女性の活躍」があるのです。

創業100年以上の老舗企業がアップデートし続ける理由

ー1912年に創業した老舗企業が、時代の価値観に合わせてアップデートし柔軟に対応できる秘訣はなんでしょうか。

私たちは時代に合わせて変化することに対して恐怖心や拒絶感はありませんでした。その理由は祖父や父の背中を見てきたからだと思います。

祖父は戦争を経験している時代に生きていたので、戦地に行っている間、誰かに経営を任せなければならなかったと語っていました。当時の状況ならではの「1人ではできないこと」を経験しており、祖父は社長でありながらほかの人に仕事を任せる決断をしていたのです。

父は高度経済成長期に、どうやって事業を拡大していくかという課題に取り組んできました。そして、これまでにないデジタル化にも積極的に取り組んできました。彼らの姿を見てきたからこそ、私自身も躊躇せずアップデートができているのだと思います。

ー変化に対応できるからこそ、今の取り組みがあると。

私は先代社長の娘としてオヤモトヤに入社し、結婚・出産・育児とライフステージの変化にともない一時期は休業していました。その後、仕事に復帰して今に至るのですが、苦労したこともありました。でも、父には私が苦労したことは理解できないでしょうし、私は苦労した経験があるからこそ、会社をより良くしたいという気持ちがあります。

経営者だから特別なわけではなく、誰もが同じだと思っています。立場や役職に関係なく、共感できる話題を話し合える環境があることが、私自身にとっても大切にしたいことなのです。