アラブ首長国連邦(UAE)は今年6月、同国の中心都市であるドバイにおいて、ドバイ未来財団(The Dubai Future Foundation: DFF)がAIプロンプト・プログラミング(作業の指示を与えるだけで、プログラムが自動作成される開発手法)の開発を管轄し、今後3年間で100万人にAIプロンプトの教育を行うと発表した。

2031年までに国内総生産(GDP)の40%がAIによるものに

アブダビと並んでドバイが重要な首長国であるUAE。同国はいま、“ポスト石油時代”に向けた準備として、経済活動において石油依存からの脱却を進めている。そして、石油国家からAI大国への転換を狙っている。なんと、2031年までに国内総生産の40%を人工知能で生み出すというのだ。

この目標に向けて、UAEは数十億ドルを投資し、世界初のAI担当国務大臣を任命。科学者を誘致し、新興企業に大規模な支援を行っている。

AIプロンプト・ エンジニアリング育成プロジェクトをスタート

AIプロンプト・エンジニアリングは、生成AIを最大限に活用するために不可欠なものである。AIモデルの機能、制限、ニュアンスを理解することが求められ、将来の仕事において最重要ともいえるスキルの一つになると予想されている。

今回のAIプロンプト・プログラミング・イニシアチブの一環として、「100万人のAIプロンプター」プロジェクトが立ち上げられる。ドバイ未来財団(DFF)は、“これはAIプロンプト・エンジニアリングの専門知識と能力を育成する、世界初のプロンプト・エンジニアリング育成プロジェクトである”と伝えている。

同プロジェクトでは、クリエイティブコンテンツの生成から複雑な課題の解決まで、さまざまなタスクで結果を達成するために、AIシステムに正確かつ効果的な指示を作成することに重点を置いている。

ドバイ未来財団(DFF)理事会会長のシェイク・ハムダン・ビン・ムハンマド・ビン・ラシード・アール・マクトゥーム皇太子は「私たちは未来志向の最先端都市を目指しています。世界的な技術革新をサポートし、ドバイをイノベーションの最前線に導く専門知識とスキルを開発することで、AI時代への準備を進めます」と述べている。

AIプロンプト世界選手権がドバイで開催

「100万人のAIプロンプター」プロジェクトの立ち上げにあたって、第1回グローバル・プロンプト・エンジニアリング・チャンピオンシップがドバイで開催された。参加者は、文学や芸術など、従来のコーディング以外のカテゴリで競い合い、AIツールの幅広い可能性を浮き彫りにした。

この世界選手権には、約100か国から数千人もの応募があったという。このうち13カ国から30人のファイナリストがドバイに集まり、3部門で最優秀プロンプト・エンジニアの称号を競い合った。優勝者は、アート部門ではオーストラリアのメーガン・ファウクス氏、コーディング部門ではインドのアジェイ・シリル氏(33歳)、文学部門ではアディティア・ナイール氏(34歳)。ドバイ人工知能センター(DCAI)は、それぞれの優勝者に100万UAEディルハム(約27万3,000米ドル)の賞金を贈っている。

(文・坂土直隆)