このまま幕引きの様相

 ドラマ制作における原作の取り扱いや原作者の権利保護が大きくクローズアップされテレビ界全体の問題となるなか、注目されているのが日テレと小学館の動きだ。日テレは芦原さんの訃報に際し先月29日と30日に次のコメントを発表して以降、沈黙を守っている。

<2023年10月期の日曜ドラマ『セクシー田中さん』につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております>(先月29日)

<日本テレビとして、大変重く受け止めております。ドラマ『セクシー田中さん』は、日本テレビの責任において制作および放送を行ったもので、関係者個人へのSNS等での誹謗中傷などはやめていただくよう、切にお願い申し上げます>(先月30日)

 また、小学館も30日に

<先生の生前の多大なご功績に敬意と感謝を表し、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。先生が遺された素晴らしい作品の数々が、これからも多くの皆様に読み続けられることを心から願っております>

とのコメントを発表して以降、情報の発信は行っていない。前述のとおり今後も経緯などに関する社外発信を行わない意向だとも報じられているが、こうした両社の姿勢に対し疑問の声も寄せられている。たとえば、『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』(ともにTBS系)などで知られる脚本家の野木亜紀子氏は5日、X上に次のようにポストしている。

<両社ともこれ以上不幸が起こらないようにとは考えているだろうし、それは当然と思います。個人の責任を追求するということではなく、条件面での掛け違いがあったのならなぜそうなったのか、経緯説明が必要と感じます>

<どちらも大企業で、原作ビジネスで散々金儲けしておきながら、問題が起きたら個々のクリエイターに責任ぶん投げて終わりなんて、そんなことある?そんなことないと思いたいので、このままなかったことにはしないでもらいたいのです>

 日本テレビ関係者はいう。

「社内では正式に詳細を調査して対外的にその結果を公表するような動きはないし、今後もそのようなことはしないとみられている。ドラマ制作の過程において進め方に落ち度はあったのかもしれないが、日テレとしては小学館との間できちんと契約を結び、最終的には原作者の意向を取り入れて承諾を受けた脚本を決定稿としてドラマを制作したので、形式上は契約違反などはないというスタンス。もし調査した結果、日テレ側の不適切な進め方などが判明して謝罪に至るようなことになると、過去数年間に遡って全ドラマを調査しなければならなくなり、現在放送中のものや、すでに企画・制作が動き出しているものにまで影響してくるので、避けたいところだろう。

『セクシー田中さん』で表面化した問題は、どのテレビ局のドラマ制作現場も大なり小なり抱えており、これ以上掘り返されたくはないというのが各局共通の本音。なので、各局の報道・情報番組もこの事案に関しては扱いに消極的であり、テレビでの報道は下火になっている。テレビ界全体として、このまま幕引きに向かわせようとしている空気がある」