今、硫黄島の南東沖に”新たな島”が誕生し、国内外で大きな話題となっています。

これは同地で10月下旬から始まった海底火山の噴火により、岩塊や軽石が積もってできたもの。

島の大きさはすでに直径300メートルに達しており、このまま火口から溶岩が噴出して島を覆えば、波に浸食されずにそのまま残る可能性が高いという。

日本にまた新しい島が仲間入りするかもしれません。

報告の詳細は、2023年11月2日付で東京大学地震研究所のプレスリリースに掲載されています。

硫黄島沖の噴火で「新しい島」が誕生!

今回、海底火山の噴火が起きたのは、東京都心から南へ約1200キロにある硫黄島(いおうとう)の沖合です。

硫黄島は小笠原諸島に属する活動的火山であり、海面上には北東・南西方向に約8.6キロ、北西・南東方向に約5.6キロの大きさが現れています。

しかし海面下を見ると、実際には直径約40キロ、高さ約2000メートルに及ぶ海底火山です。

同島の南東沖では近年、火山の噴火が何度か確認されており、2022年7月には有史で初めてとされる「マグマの噴出」を伴う水蒸気爆発が起こっていました。

その後、2023年6月にも噴火があり、この度の噴火活動に至っています。

硫黄島とその南東沖で発生した今回の火山噴火の図解
Credit: 東京大学地震研究所 – 2023年10月30日硫黄島沖噴火と新島形成について(2023)

気象庁によると、今回の噴火は2023年10月21日頃に硫黄島の南岸数百メートルの沖合で始まったと見られています。

東京大学の研究チームは毎日新聞社機に同乗し、10月30日の12時20分〜12時35分頃に海底火山の噴火を実際に観察しました。

数分おきに垂直ジェットを伴うマグマ水蒸気爆発が発生し、ジェットの高さは最高50メートル以上に達していたとのこと。

時折、幅数メートルを超える岩塊を投出していたといいます。

そして噴火地点のすぐ北側で、主に岩塊と軽石からなる直径100メートル程度の新島が形成されていました。

(11月9日時点では陸地の長さがすでに300メートルに達しているという)

新島の画像はこちらのプレスリリースで公開されています。

東京大学の名誉教授で火山地質学者の中田節也(なかた・せつや)氏は「軽石の固まった小山ができて、それが今、島状に分布している」と説明。

また火山は現在、ほとんどが灰を噴出している状態ですが、「今後はマグマを噴出する噴火に変わっていき、それが続けば、溶岩が全体を覆って、島が波に浸食されずに残るというストーリーが考えられる」と中田氏は話しています。

軽石による被害は大丈夫?

一方で、火口の周辺には白くて大きな軽石が大量に浮遊しています。

軽石とは、多孔質で密度の小さい火山噴出物の一種で、これが大量に集まると「軽石いかだ」と呼ばれる塊状になって海を漂流します。

水に浮く軽石
Credit: ja.wikipedia

これを聞いて、2021年に沖縄諸島で起きた軽石被害を思い出す方もおられるでしょう。

この被害は同年8月13日に発生した「福徳岡ノ場(硫黄島の南南東約60キロ)」という海底火山の噴火が原因となったものです。

この噴火は日本国内で戦後最大級の規模とされ、噴煙の高さは約1万7000メートルにも達しました。

そして10月以降、噴火によって発生した大量の軽石が、海流に乗って1万キロ以上も離れた沖縄諸島に流れ着いたのです。

このとき、港に押し寄せた軽石により、地元の漁師が船を出せなくなって漁に支障をきたしました。

では、今回の硫黄島沖の噴火により同様の被害は出ないのでしょうか?

中田氏は次のように述べています。

「硫黄島から軽石が流れた場合には、まず沖縄に向かい、それから黒潮に乗って、日本の近海まで来ますので、小規模に届くとは思います。

しかし、噴火はこれから溶岩を噴出するステージに入るので、軽石の生産は比較的少なくなると予想され、漁業に影響が出ることもほとんどないでしょう」

どうやら軽石による被害はあまり心配なさそうです。

また火山が溶岩を噴出し続ければ、その分だけ島の大きさも拡大していくと思われます。

新島は一体どこまで成長していくのか、今後も注目が集まります。

参考文献
2023年10月30日硫黄島沖噴火と新島形成について
New Island Emerges Off Japan After Powerful Underwater Volcano Eruption
Underwater volcanic eruption gives birth to new island in the Pacific

提供元・ナゾロジー

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