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ドイツが徴兵制を停止したのは2011年。当時、メルケル政権のツー・グッテンベルクという国防相の下で、大した議論もなくあっという間に決まったのを覚えている。廃止ではなく停止というのがミソで、いつか必要になったら復活する可能性を残したといわれた。そして今、唐突に、そのまさかが頭をもたげ始めている。

ピストリウス独国防相Wikipedia

ピストリウス現国防相(23年1月就任・社民党)は、国民の間で抜群の人気だ。次の首相か、という声さえある。氏の前任は、メルケル時代から現ショルツ政権にかけて女性の国防相が3代も続き、しかも3人とも、これで兵隊たちは戦う気になるのだろうかと心配になるほど、国防などとは全く無縁そうなタイプの人ばかりだった。おそらく大臣職での男女の数合わせに、国防省が使われた結果だ。ドイツ政府はそれほど国防を軽んじており、国防相は男女平等を表すためのお飾りと成り下がっていた。

ただ、今のドイツでは、「国防大臣はやはり男性の方が良いのではないか」などとは、間違っても口走れない雰囲気が蔓延している。だから、誰もそんなことは言わないが、ピストリウス氏の人気をみると、実は皆、心の中では男らしい国防大臣を欲していたのではないかとも思えてくるほどだ。ちなみにドイツには最近、その他にも口にできないテーマが多々あるが、今日はそれには触れない。

さて、国防を軽んじているうちに、連邦軍では当然のことながら戦車も戦闘機も老朽化し、今や多くが実戦では使い物にならない。でも、軍事費は少なければ少ないほど良いという風潮の中、そんなことは誰も気にかけないし、皆、どうせドイツが戦車を駆って戦う日など2度とこないと思っていた。