2023年度の入試で、東京工業大学は女子だけが受験できる女子枠を設置し、大きな話題となりました(讀賣新聞オンライン)。

この女子枠は東京工業大学だけではなく、電気通信大学、東京理科大学、富山大、名古屋大学など数多くの大学が導入を始めています(旺文社教育情報センター)。

理系に進学する女性の比率が低い現状を憂い、「もっと理系の女性を増やすべき」という考え方のもと始まっている女子枠ですが、そもそもなぜ理系に進学する女性の数は少ないのでしょうか?

女性よりも男性のほうが理系科目の能力が高いから? 女性は理系科目に興味がないから?

実は、理系における男女差は能力よりも環境が大きいとされています。

今回は、「なぜ女子は理系になりにくいのか」、その要因を研究した、大正大学日下田岳史准教授の論文を紹介します。

目次

  • 日本は諸外国に比べ理系女子の比率が低い
  • 女子の理系への苦手意識は環境が左右する

日本は諸外国に比べ理系女子の比率が低い

実験を行う男女
実験を行う男女 / Credit:photoAC

理系の学部は女性がかなり少なく男性ばかり。

日本では当たり前の光景ですが、これは世界的に共通するわけではありません

OECDの調査結果(理系の女性比率)
OECDの調査結果(理系の女性比率) / Cedit:OECD

OECDの2021年調査によると、科学、技術、工学、数学(STEM)分野の女性比率は、日本はOECD中最下位の17.5%です。

1位のアイスランドでは42.8%と約半数を占めていますし、OECDすべての国の平均も32.5%という状況です。

世界的にみると、日本ではかなり理系の女性比率が低いことが分かります。

日本の女性は数学や物理などの理系科目を苦手とするから、理系に進学しないのでしょうか?

いいえ、日本人女性の数学的なスキルは決して低いわけではありません

男女間における数学の能力差はさほど大きくない

数学スコアの比較

Cedit:OECD

上のグラフは、各国の数学能力を測るスコアを比較したものです。

日本は男女ともにOECD中1位の数学スコアを持っています。

さらに、日本人女子の数学スコアは531.1と、2位の韓国人男子529.7よりも高い結果となっています。

日本人女子の数学スコアが著しく低いのであれば、女性が理系に進まないのは能力が関係しているといえますが、能力的には問題ないといえます。

また、諸外国でも理系は男性のほうが多い状況ですが、男女間でスコアにそこまで大きな差があるわけではありません

このことから、理系における男女比に偏りが出るのは、能力的な問題とは別の部分に要因があると考えられます。

大正大学の日下田准教授は、女子が「自分は理系である」と思えないのは、小学校高学年における環境が大きいのではないかと指摘します。