艦船や戦艦に動物が持ち込まれるケースというのは珍しくない。その用途は、敵艦からの回収や害獣駆除のためと様々であるが、それがのちに愛玩用(ペット)として親しまれた例も少なくはない。「船乗り猫」と呼ばれるものが古くからあり、その他、乗員たちの士気を高める為に猿や山羊といった動物が乗船したという例もあるという。中でもイギリス海軍にまつわるそのような話はとても多く、ドラマに満ちている。
例を挙げると、1941年、日本の雷撃機で撃沈させられた英海軍の河用砲艦グラスホッパーでは、その当時「ジュディ」という名の犬を飼育していた。ジュディは、第二次大戦中に捕虜となった唯一の犬とも言われており、捕虜となった搭乗員たちと共に収容所へ連行されることを許された。
この時、捕虜たちはどうしても彼女を捕虜として連れて行ってほしいと尽力をしたという。航空機の音を聞きつけ乗員たちに警告を発し吠えたり、栄養不良の捕虜たちへ食料を持って来たりと、愛された存在であった。その功績が称えられ、1945年にはディッキン勲章が授与された。
また、1914年に、フォークランド沖海戦にてドイツ帝国海軍からイギリス海軍に回収された、「ティルピッツ」という名の豚がいた。元々、ティルピッツはドイツの軽巡洋艦ドレスデンに食肉用として飼育されていたが、自沈したことで多くが捕虜となる中、艦上に取り残されていたのを英海軍グラスゴーによって救い出された。
ドイツの提督の名を取ってティルピッツと名付けられた豚はペットとして受け入れられ、また自艦を放棄しなかった唯一の搭乗員として称えられ、手作りの鉄十字勲章も与えられたという。しかし、残念ながら”退役”1919年には食肉として売却され本来の役割を全うした。頭部はロンドンの英国戦争博物館に今も残されているという。
こうした中で最も有名なのは、船乗り猫「不沈のサム」だ。この白黒の猫は、元々ドイツ海軍の戦艦ビスマルクに搭乗していたが、1941年5月にビスマルクは英海軍によって沈没してしまい、その中で駆逐艦コサックに救助された”搭乗員”の一人として知られている。
オスカーと名付けられた猫は、食糧や電気配線を脅かすネズミ駆除のための”船乗り猫”の役目を果たすため、また船員たちの心を癒すためにたびたび艦船へ搭乗させられていた。
だが、同年10月にドイツの潜水艦からの攻撃によって駆逐艦コサックが沈没、一命を取り留めたオスカは次に航空母艦アーク・ロイヤルに赴任。11月には再び攻撃を受けて転覆沈没、破壊された発動機艇の板にしがみついているのを発見され保護された。こうしてオスカーは、計3度もの沈没においても生還を果たし、「アンシンカブル・サム(不沈のサム)」として知られるようになってのちの1955年にその生涯を終えたという。ただし、この「不沈のサム」についてはフィクションではないかとの説もある。
なんとも豊富なイギリス海軍の従軍動物の逸話の数々であるが、それを物語るような噂もある。とある一隻の戦艦の中で、ある時動物の持ち込み具合を調べたところ、鹿、猿、熊、ワニ、など計1560頭もの大小さまざまな動物が確認されたというのだ。「戦艦は動物園ではない!」という上層部からおしかりにより、その後動物の持ち込みは禁じられてしまったという。
実際に、1975年以降英海軍において動物の持ち込みが禁じられたようであるが、この逸話は100年ばかり前の話として語られている。もし、この逸話が本当であれば上記の数例とは時期の辻褄が合わない。英海軍の動物船員の豊富さをジョークとして物語った逸話である可能性も考えられるだろう。
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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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