――予言・ 滅亡研究家の白神じゅりこが古今東西の予言者の言葉を独自に解釈、不確実・不確定な未来を生き抜く知恵を授ける連載。地震や台風などあらゆる自然災害、紛争・戦争などの人災の発生、 重要人物の急死あるいは復活、政治的スキャンダル、 歴史的大事件などを科学的・経験的な予測を超越した“予言” を通して眺めていく。

 今回は巨大地震の前に現れるという地震雲を取り上げる。

 2月6日、トルコ南部のシリア国境近くで、M7.8とM7.5の大地震が立て続けに起こった。この地震による死者は、15日時点で4万1千人を超えると報じられている。

 未曾有の大災害となったトルコ大地震だが、地震が発生する直前に奇妙な雲が目撃されていたことが報告されている。

 1月22日、トルコ北西部のブルサ市の上空に黒い巨大な目玉のような不気味な形の雲が出現。これを見た人々からは、「雲に擬態したUFOではないか?」「終末的な光景だ!」と、なにか悪い出来事の前兆ではないかと恐れる声があがった。

トルコの地震雲がアルゼンチンに出現!

 海外ミステリーサイト「SoulAsk」によると、今月13日にはアルゼンチン南部パタゴニアのチェブ州にあるコモドーロ・リバダビアの上空に同様の雲が出現。異常な雲と地震との関連性に関する理論が正しければ、数週間以内に、トルコとシリアを壊滅させたような大地震がアルゼンチンを襲う可能性があるという。

 同じくアルゼンチンのサンタフェ北部ラグーンでは、数千匹もの魚が死亡する出来事があった。死因は、高温による水中の溶存酸素の減少だという。地震とは関連しないことであるが、魚の大量死といった不気味な現象も、今回アルゼンチンで出現した雲が地震前兆ではないかという恐怖に拍車をかけているようだ。

地震雲なのか?

 果たして、トルコの謎の雲は地震を予言した地震雲だったのであろうか?

 トルコの謎の雲は「レンズ雲」とされている。「レンズ雲」は上空の風が強い時、山にぶつかって波打つように流れ、それにより流線型の雲が形成される。これがレンズのように見えるので「レンズ雲」と呼ばれる。

 レンズ雲が地震雲なのかどうかについては、英紙「ロイター」(2月11日付)が複数の専門家に聞いてファクトチェックを行っている。 

 米国国立公園局は、「『レンズ雲』は、安定した湿った気団と山岳環境の強風によって生じる」と説明している。ブルサは、スキー場としても有名なウル山の麓にある町であり、「レンズ雲」ができやすい山岳環境にある。

 そして、米コーネル大学の地球大気科学部門のマーク・ワイソッキー氏は、「『レンズ雲』は、空気と山との自然な相互作用から形成される。そして、地震は地球の地殻の自然な動きから形成されます。この2つは関連しておらず、一方が他方を引き起こすことはない」というように、雲と地震の関連性を否定した。

 またワシントン大学地球宇宙科学部のハロルド・トービン教授は、雲と地震を結びつける科学的根拠はないとしている。

 トービン教授は、2回目の地震の震央であるトルコ南東部の最南端にあるカフラマンマラシュとその2週間前に「レンズ雲」が記録されたブルサとの距離は約1000キローメトルも離れており、結びつけて考えるのには無理があるとしている。

 というように数々の専門家が今回のトルコの謎の雲と地震には関連性がないと主張している。東京・渋谷のハチ公像から北海道稚内や韓国釜山までの直線距離が約1000km。稚内や釜山で地震雲が目撃され、東京で地震が起こっても、そこに関係性を見出すことは難しいだろう。

 このように地震雲の存在は科学的には否定されており、アルゼンチンで大地震が起こる心配はない。しかし、もし今後2週間以内にアルゼンチンで大地震が発生したら、専門家らの認識も少しは変わるかもしれない。

 いずれにしろ、科学的に精確な地震予測が困難である以上、いつその時が来ても慌てないよう、日ごろから防災意識を高めておくことが大切だ。地震雲は日常に埋没して忘れてしまいがちな巨大地震の存在をわれわれに思い出させてくれる象徴のようなものだと考えてみても良いだろう。

参考:「SoulAsk」「Reuters」ほか

文=白神じゅりこ

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提供元・TOCANA

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