近年、月額や年額などの定期額料金を支払うことで商品やサービスを継続的に得られる「サブスクリプション(サブスク)」が流行・拡大しています。
しかし同時に、それらサブスクを提供する企業が、解約をあえて難しくしている場合があります。
アイルランドのメイヌース大学(Maynooth University)に所属するアシュリー・シェル氏ら研究チームは、複雑で困難な解約方法について、どのような傾向があるか調査しました。
研究の詳細は、2024年5月11日付で、国際会議『CHI 2024』用の発表論文に掲載されています。
多くの企業の「サブスク解約が難しい問題」を分析
ある大手企業は、提供するサブスクの解約手続きをあえて複雑化しました。
なんと顧客は、サブスクを解約するために、最低6回もクリックする必要があったのです。
現在では、苦情を受けて2回のクリックで解約できるようになっているものの、こうした傾向は多くのサブスクで未だ根強く残っています。
シェル氏ら研究チームは、この複雑な解約手続きを「Roach Motel(日本では、ごきぶりホイホイという名称が一般的)」と呼んで言います。
「一度入ったら、出られなくなる」ものとして、ピッタリのあだ名ですね。
そして今回研究チームは、いくつかのサブスク・サイトを調査し、解約にどのような手順が必要か分析しました。
その結果、顧客にとって「厄介な戦術」が多く採用されていることが分かりました。
例えば、ユーザーを騙し、判断を誤らせるような悪意のあるデザインが採用されていケースが少なくありませんでした。
前述のように、解約のために何度もクリックしなければいけないとか、そもそも解約手続きをどのように行うのか分からないようにしているのです。
また、ユーザーが解約しようとすると、羞恥心や罪悪感を与えて、解約することがあたかも悪いことのように思わせる手法も取られていました。
企業側が「解約するなんて、本当に残念です」とか、「あなたの解約が私たち企業の経営を破綻させるかもしれません」などのメッセージを送るのです。
さらに研究チームは、いくつかの企業が、「解約したのは間違いだった」という言葉を投げつけているのを発見しました。
加えて、解約するために、アンケートの回答や確認のための特定のフレーズの入力を強制するケースもありました。
ちなみに研究チームは、「調査対象となった67件のサブスクのうち、63件はオンラインで解約可能だったが、残りの4件は電話しないと解約できない仕組みになっていた」と報告しています。
国ごとにも、サブスク解約の難易度には違いはあったようで、ヨーロッパでは解約がいくらか簡単でした。
しかしその理由は、企業側の善意によるものではなく、ヨーロッパの法律によるものです。
結論としてチームは、「注意深さと技術力を兼ね備えたユーザーはうまく解約できるかもしれないが、そうでないユーザーは、望まないままサブスクを継続してしまう」と述べています。
この研究の対象に日本は含まれていないものの、私たちも安易な契約・入会には気を付けるべきでしょう。
初月無料などで契約自体は魅力的かつ簡単ですが、解約はかなり難しいかもしれません。
参考文献
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元論文
Staying at the Roach Motel: Cross-Country Analysis of Manipulative Subscription and Cancellation Flows
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部