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スバル1000以来の系譜とイメージによる限界
高級クーペを目指した努力は、後のスバル車に受け継がれた
スバル1000以来の系譜とイメージによる限界
そもそもスバル(当時の正式社名は富士重工)とは、スバル360(1958年)や初代サンバー(1961年)で軽自動車の名門となり、本格的な小型車第1号のスバル1000(1966年)や、国産4WD乗用車の先駆け、初代レオーネ(1971年)で足がかりを作ったメーカーです。
ただし、小規模メーカーの常として販売力は小さく、4WDへのこだわりで妙に腰高なのを払拭するほどのデザインにも恵まれず、4WDが重宝された雪国や北米など海外の輸出先以外では、「ドン臭い変なクルマのメーカー」という印象を拭えずにいました。
そこへ登場した先鋭的なデザインのアルシオーネでしたが、プレリュードほど都会的ではなく、3ドアファストバックのセリカほどデザインと実用性を両立しているわけでもなく、しかもベースは4WDであること以外、それほど評判よろしからぬレオーネです。
スバルの個性である水平対向エンジンも、スバル1000以来のEA系をSOHCターボ化したネット120馬力のEA82Tを搭載しましたが、その頃にはDOHCターボで1.6リッターのファミリアGTが140馬力、2リッターのセリカGT-FOURなら185馬力で勝負になりません。
各種機能をスイッチ化し、ステアリングコラム連動でチルトする「コントロールウイング」も、いすゞの「サテライトスイッチ」同様にヘンテコで慣れないと扱いにくい印象を与えてしまいます。
そして何より、カタログと異なり腰高さを感じさせた実車の印象は、レオーネをベースとした従来からの殻を破れない、「いかにもスバル車」だったのが致命的でした。
高級クーペを目指した努力は、後のスバル車に受け継がれた
それでも北米では好調だったアルシオーネですが、発売年に起きた対米貿易赤字の削減策、「プラザ合意」で円・ドル為替レートが急激に円高に振れると、アメリカでの価格が急上昇して、「安い割にオシャレなクーペ」だった現地名スバル XTの人気は急落します。
それなら値上がり分に見合った高級クーペに仕立てるしかなく、1985年の東京モーターショーに「ACX-II」として出展した2.7リッター水平対向6気筒エンジン搭載版アルシオーネを、1987年に市販しました。
これは単に大排気量化だけでなく、駆動システムのフルタイム4WD化、上級グレードでは電子制御トルクスプリット4WDの「ACT-4」に4速ATやABSとの統合制御を加え、現在のスバル車に通じるプレミアム路線に転じたものです。
ただ、ACX-IIのようにワイドボディ版が仕立てられず、不評のスタイリングにまで手がつかなかったので国内では引き続き不評、輸出先でも元が「安くてカッコいいクーペ」でウケていたのを、急にラグジュアリークーペと言っても受け入れられません。
1991年に本格的なラグジュアリークーペ、アルシオーネSVX登場まで生産は続けられたものの、その頃には初代レガシィがセダンRSはWRCで活躍、ワゴンGTはワゴンブームを爆発させる大ヒットの影で、アルシオーネは半ば忘れられました。
時代の変化に翻弄された存在ではありましたが、スバルの誇りを賭けたフラッグシップモデルへ傾けられた数々の努力は無駄になることはなく、その水平対向6気筒エンジンや電子制御4WDの技術は、プレミアム路線に転じた現代のスバル車に今も息づいています。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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