宇宙空間からの地球観測(リモートセンシング)画像は、気象、農業、漁業、都市開発などのさまざまな事業において必要不可欠なもの。しかし、地上の画像をとらえる気象衛星は国による格差が存在する分野だ。
自国の気象衛星を有する国・地域は日本を含め7か国とEUの1地域のみ。日本の気象衛星ひまわりが撮影する画像は、担当地域であるアジア・オセアニア、西太平洋地域の各国にも提供されている。
南アフリカのSimera Senseは、キューブサットや小型衛星に搭載するための光学ソリューションを提供するスタートアップ。一般向けのデジタルカメラと大差ないサイズの高性能カメラを小型衛星に搭載、より高精度での地球観測実現に向けて取り組みを行っている。最小モデルは370グラム、最高解像度はGSD1.5メートル
Simera Senseがキューブサット向けに展開するのは、ミニサイズながらパワフルで高性能を誇るイメージャー(カメラ)。
「xScape50」という製品は大きさが約96×90×112ミリ、重量はわずか370グラムである。高度500キロメートルでの観測幅は120キロメートル、GSDは29.3メートルという性能を誇る(GSDは地上分解能のことで、この場合は撮影した画像の1ピクセルが地上の29.3メートルに相当する)。
「xScape100」のサイズは50と大差ない98×98×176ミリだが、重量は1.2キログラム。同じ高度での観測幅は19.4キロメートル、GSDは4.75 メートル。
最も大型で高精細な「xScape200」はサイズが216×216×304ミリ、約12キログラム、同高度での観測幅は14キロメートル、GSDは1.5メートルだ。地上1.5メートルの大きさの物体を認識可能であり、精密かつピンポイントでの観測が実現する。また、これらの製品はデータのオンボード処理機能も備えている。通信先の地上施設ではなく、人工衛星上で直接撮影データを処理するのだ。これにより、地上との通信の問題も解消するという。
宇宙開発分野で存在感示す南アのスタートアップ
2017年設立のSimera Senseが拠点とするケープタウンは、南アフリカ宇宙系スタートアップのハブ的な都市。不十分なインフラというハンデを乗り越えた南アのベンチャーは、この分野で世界的な競争力を誇っている。人工衛星全体ではなく特定のコンポーネントに特化する方針が特徴的で、以前に紹介したDragonfly Aerospace社も、衛星用のイメージング・ソリューションを提供する南ア企業だ。
Simera Senseは今年3月、NewSpace CapitalとKnife Capitalが主導した投資ラウンドで1350万ユーロの資金を調達した。生産能力の拡大およびヨーロッパ域内での生産拠点の増加、さらなる製品開発に投入するという。また、6月にはフランスのトゥールーズに光学ペイロード開発拠点を設けたことを発表している。
この時点で、Simera Senseが宇宙空間に送り出したペイロードは19点、世界各国の顧客に届けられ打ち上げ待機中のペイロードは43点とのこと。同社の顧客リストには、人工衛星のライドシェアを目指すLoft Orbital、ギリシャ政府と契約を結んだOpen Cosmosなどが名を連ねている。
Space in Africaの予測によると、アフリカの宇宙産業市場規模は2026年までに226億ドルに到達する見込み。「少ない労力でよりアクセスしやすい地球観測」の実現を目指すSimera Senseが同市場で果たす役割に注目したい。
(文・澤田 真一)