ヒメコンドルは病原菌に対処するため胃酸が強力!さらにそれを武器にする
ヒメコンドルは病原菌まみれの腐肉を食べても、まったく心配ありません。
というのも彼らは酸性度の高い強力な胃酸を持っているからです。
これまでの研究で、ヒメコンドルの胃酸はコレラ菌や炭疽菌、結核菌やサルモネラ菌、ボツリヌス菌や狂犬病ウイルスなど、非常に有害な病原体を殺せることが分かっています。
そのおかげで、バイ菌まみれの腐肉でも難なく摂取することができるのです。
どれくらい強いかをpH(水素イオン濃度)で見てみましょう。
一般的にpH7を中性とし、pH7以上になるとアルカリ性、pH7以下になると酸性です。
私たちヒトの胃酸はだいたいpH1~2あたりですが、ヒメコンドルを含むハゲタカの胃酸はpH0.2と異常な強酸性になっています。
そしてヒメコンドルは、この強力な胃酸を一種の武器として利用しているのです。彼らは食事をジャマされたり、身の危険を感じると、部分的に消化された腐肉と強力な胃酸を混ぜた「ゲロ鉄砲」を吐きつけます。
有害な腐肉に加えて、皮膚が溶けるかもしれないゲロ鉄砲は相手を怯ませるのに打ってつけの武器です。
また彼らはゲロ鉄砲を最大3メートルの距離まで飛ばすことができます。
この習性は赤ちゃんの頃からあり、ヒメコンドルの飼育員にとっては大きな悩みのタネになっているそうです。
ちなみに、糞尿にも強酸が混ざっており、彼らはそれを自らの足にかけることで消毒をする習性も持っています。
このようにヒメコンドルは強力な胃酸を食事から護身術、消毒に至るまで、シチュエーションに応じて使い分けているのです。
加えて、彼らの胃酸は私たち人間を含む生態系を危険な病原菌から守ってくれてもいるのでしょう。
参考文献
Turkey vultures have the ultimate self-defense technique: projectile vomiting
Why do Vultures Self Defense Vomit?
Turkey Vulture
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。