パンを一度冷凍することで得られる健康効果
英オックスフォード・ブルックス大学(OBU)は健康な成人男女10名(22〜59歳)を対象に、白パン(※)を冷凍してから食べることの健康効果を検証しました(European Journal of Clinical Nutrition volume, 2007)。
(※ 白パンとは、小麦粉全体からふすまと胚芽層を除去した小麦粉から作られたパンのこと。これにより貯蔵寿命は伸びるが、食物繊維がなくなるため、糖分を吸収しやすく、血糖値も上がりやすい)
実験では「自家製パン」と「市販のパン」を比べており、そのまま食べてもらう条件・冷凍後に解凍したものを食べてもらう条件・冷凍後にトーストした条件で、血糖値の変化を測定。
その結果、そのまま食べた条件に比べて、冷凍したパンを解凍して食べると、血糖値の上昇が2時間内で31%も減少していました。
さらに解凍したパンをトーストすると効果が高まり、血糖値の上昇が39%も減少していたのです。
この結果はパンを冷凍することで増加したレジスタントスターチの作用によるものと考えられます。
ただし、この効果は自家製パンで強く見られ、市販のパンでは血糖値の上昇に有意な変化を与えませんでした。
これについて研究者は、市販のパンに含まれるさまざまな化学物質や製造方法の違いから、レジスタントスターチの形成が抑制された可能性があると説明しています。
なのでコンビニの菓子パンなどを冷凍しても効果は期待できないでしょう。
また、この健康効果が期待できるのはパンだけではありません。
レジスタントスターチはお米やジャガイモ、うどん、パスタなどにも含まれており、それらを冷ますとレジスタントスターチが増えることがわかっています。
特に冷凍したご飯は炊き立てのご飯に比べて、レジスタントスターチの量が約1.6倍まで増えます。
ただ、冷やご飯の場合はレンジで温め直すとレジスタントスターチ量が少し減ってしまうようですが、それでも炊き立てのご飯よりは多く含まれています。
しかし冷やご飯に温かい汁物をかけて温めた場合はレジスタントスターチの減少は起こりませんでした。そのため、冷やご飯でカレーやお茶漬けを食べると効果的なようです。
一方で、ご飯を常温で長時間放置して冷まそうとするのは危険です。
米や小麦には「セレウス菌」という細菌が潜んでおり、それらは常温放置で危険水準まで増殖し、食中毒を引き起こすことがあるので注意しましょう。
いずれにせよ、パンやご飯を冷凍保存することは、便利なだけでなく健康面で有益なものになるのは確かなようです。
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参考文献
Does Freezing Bread Make It Any Healthier For You? An Expert Explains.
元論文
The impact of freezing and toasting on the glycaemic response of white bread
Prolonged frozen storage of partially-baked wheat bread increases in vitro slowly digestible starch after final bake
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。