緊急連絡用のアマチュア無線しかなかった村に突如、インターネットが開通した。スマホの画面越しに溢れ出る情報の洪水に村人たちはすぐさまスマホ依存症に――。特に深刻なのは若者たちのポルノ中毒だ。
■インターネット開設で村人はスマホ依存症に
インドの離島で暮らす“センチネル族”のように文明を一切拒絶して自給自足の生活を続ける先住民族は実はきわめてレアなケースで、世界各地の多くの先住民族は緩やかに文明を受け入れており、その過程で事実上、部族の伝統が消滅してしまった例も少なくない。
ブラジル・アマゾンの熱帯雨林の奥深く、イトゥイ川沿いに暮らす人口2000人の先住民族、マルボ族(Marubo)の村に2023年9月、インターネットが開通した。イーロン・マスク氏がCEOを務める「スペースX」社が運用しているスターリンク衛星がこの村でのインターネットへのアクセスを可能にしたのだ。
これまでは村には緊急連絡用のアマチュア無線しかなかったということだが、ラジオやテレビをスキップしていきなりインターネットが導入されたのはこの村にとってまさに“情報革命”であったことは間違いない。
インターネット導入から半年以上が過ぎ、村民たちの生活に何か変化が訪れたのだろうか。
どうやらそれは“変化”どころではなく“激変”であった。
もちろん急病の患者が出た場合などに外部との連絡がすぐに取れるようになったことなどは望ましい変化であったが、開設から短期間のうちに若者を中心に多くの村民が“スマホ依存症”になってしまったのだ。
英紙「Daily Star」によれば、部族の長老ツァイナマ・マルボ氏は「インターネットが普及したときは皆喜んでいたが、今では事態は悪化している。若者はインターネットのせいで怠け者になっている」と指摘し、「白人のやり方に染まっている」と嘆いている。
また、マルボ村協会のリーダーであるアルフレド・マルボ氏は、ネット上のポルノコンテンツの影響力に危機感を覚えている。
マルボ族は伝統的に性に関してきわめて抑制的で、公共の場でのキスさえ許されていなのだが、今では多くの若者がポルノコンテンツの視聴に夢中になっているという。
同氏は「若者がそれ(ポルノ的性行為)を試したがるのではないかと心配している」と懸念している。
村民たちの“激変”によって、狩猟スケジュールにも問題を引き起こしており、長老たちはインターネットの使用を制限せざるを得なくなったのだ。現在では毎朝2時間、毎晩5時間、日曜日は一日中、インターネットへのアクセスを制限しているということだ。
2010年から2012年にかけてアラブ世界において発生した大規模な反政府運動 「アラブの春」のエスカレーションは、スマホとSNSの普及が後押ししたといわれているが、インターネットの導入がそれまで閉ざされていたコミュニティに及ぼす影響は計り知れないものがあるのだろう。
はたして今後マルボ族はどのような道を進むことになるのか。短期的には残念なことになりそうな気もするが、インターネットの導入は若者たちの可能性を拡げる一面があることは間違いない。
参考:「Daily Star」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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