超音波を使って魚の位置を把握する「魚群探知機」の技術は、昔からよく知られています。

同じように、空気中を飛び交う電波を使用することで、魚ではなく人の位置を把握することができます。

オランダのスタートアップ企業「Gamgee」は、電波を利用して通信する技術の1つ「Wi-Fi」を活用して、家の中にどんな人がいるのか把握できるセキュリティ・デバイスを開発しました。

今やWi-Fiは、家のルーターを通してどこでも飛び交っていますが、新しいデバイスは、その電波を利用して、壁越しでも個人を特定できるというのです。

これを利用するなら、侵入者を即座に発見したり、高齢者の動きに絶えず注意を払ったりできます。

目次

  • 電波を使って人の動きを把握する技術
  • Wi-Fiで人の動きを把握するセキュリティ・デバイス

電波を使って人の動きを把握する技術

人や物体の位置を把握するのに役立つのは、魚群探知機のような「音波」だけではありません。

無線技術に使用されている電波を用いることも可能です。

例えばアメリカ国立標準技術研究所(NIST)の2021年の研究では、マイクロ波(短い波長域の電波)を使って、壁の向こう側の人の動きを把握することに成功しています。

壁の向こうの人の動きを把握できる。右側の無線信号の画像化には人の移動する様子がリアルタイムに確認できている。
壁の向こうの人の動きを把握できる。右側の無線信号の画像化には人の移動する様子がリアルタイムに確認できている。 / Credit:NIST,NIST Method Uses Radio Signals to Image Hidden and Speeding Objects(2021)

無線信号で壁の向こうを「透視」できる新技術が開発される

これは不思議なことではありません。

携帯電話が屋内でも使えることからもわかるように、マイクロ波を含む無線信号は、基本的にコンクリートや木、ガラスなどを通過します。

マルチサイトレーダーは複数の電磁パルスの反射時間と三角測量法を利用して対象の位置を割り出す
マルチサイトレーダーは複数の電磁パルスの反射時間と三角測量法を利用して対象の位置を割り出す / Credit:canva,ナゾロジー編集部

この性質と、マルチサイトレーダーの原理(複数の電磁パルスを発射し、三角測量法で対象の位置を特定する技術)を利用することで、リアルタイムで壁の向こう側の人間の位置や動きを把握できるのです。

この技術を家の中で利用するなら、ホームセキュリティを大幅に向上できるでしょう。

しかし、セキュリティのために全く新しい電波システムを導入するのは面倒です。

もっと身近な電波を利用することはできないのでしょうか。

実は、アメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の2018年の研究(PDF)では、Wi-Fiを使って壁越しに動き回っている人間を最大20人まで数えることができると報告しています。

私たちにとって、今やWi-Fiは無くてはならないものです。

ほとんどの家にはWi-Fiルーターによって家中をWi-Fiが飛んでいます。

こうした状況を利用しない手はありません。

実際、オランダのスタートアップ企業「Gamgee」はWi-Fiを用いたホーム・セキュリティ・デバイスを開発しました。