「CDSの知名度が低い」ことが問題
CDSがADHDと間違われやすい原因の1つは、CDSを定める公的な基準がまだ存在していないため、診断が困難な点があげられます。
一部の心理学者は、質問票と行動観察を組み合わせて、「頻繁な空想、頭の中がボンヤリする、処理速度が遅い」などの程度を評価することでCDSの診断を行っています。
しかしCDSと判断できても、症状をサポートして改善するための治療法も確立されていません。
認知行動療法によって最良の対処法を身につけたり、ADHDに使用されるのと同じ治療薬が有効との意見もありますが、まだエビデンスは得られていないといいます。
そして最大の問題は「CDSの知名度が非常に低いこと」と専門家は指摘します。
CDSはADHDに比べると社会的な認知度が低く、今回初めて聞いたという方も多いでしょう。
そのせいでCDSは他の症状と混同されて正しい治療がされなかったり、悩みが理解されずに「単にだらしないだけ」とか「努力が足りないからだ」と批判されやすいのです。
そこでCDSの病理を根本から理解し、原因の究明や治療法の開発を進めることが、症状に苦しんでいる人を支援する上で急務だと考えられています。
おそらく、CDSが一般に認知されていないために、隠れCDSの人が世界中にたくさんいるはずです。
専門家らは「CDSはもっと注目されるべき疾患であり、ADHDとは分けて考えるべきでしょう」と話しています。
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参考文献
Find It Hard to Focus? You May Have Cognitive Disengagement Syndrome
https://www.sciencealert.com/find-it-hard-to-focus-you-may-have-cognitive-disengagement-syndrome
元論文
Examining Cognitive Disengagement Syndrome in Relation to Social Problem Solving in Young Adults
https://doi.org/10.1177/10870547241247176
Report of a Work Group on Sluggish Cognitive Tempo: Key Research Directions and a Consensus Change in Terminology to Cognitive Disengagement Syndrome
https://doi.org/10.1016/j.jaac.2022.07.821
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。