缶であるがゆえに缶紅茶は撤退せざるを得なかった
ストレートティーの缶紅茶が消えてしまった理由は、ほかにもあるという。
「缶とはそもそも短時間に飲みきってしまう“飲み切り”を想定した容器であり、持ち運びや長期携帯には不向きなものです。ですが紅茶は、一気飲みするのではなく、お菓子のお供や、仕事が一段落付いたときに飲むなど時間をかけて嗜む飲み物です。ですから本来であれば、缶とは相容れない特徴を持っています。ミルクティーならまだしも、ストレートティーは、すっきりとした味わいですし、ガバガバと飲むことは考えづらい。加えて、紅茶は若い女性をターゲットにすることが多いので、なおさら飲みきることは想定しづらいんです。
缶紅茶が流行りづらい理由を踏まえると、自動販売機で豊富な種類の缶コーヒーが販売されている理由がわかってきます。缶コーヒーを購入するターゲット層は、主にブルーカラー。カフェインが含まれており、砂糖をふんだんに使用した缶コーヒーは、仕事中の休憩や間食代わりに適しており、身体を動かす労働者にとっては、格好のエネルギー源となります。ミルクティーの紅茶が多い理由も、甘くて飲み応えがあるためです。小容量の缶なので一気に飲みきることができますし、仕事中でも問題ありません」(同)
もっとも、自動販売機は減少していく可能性があるという。
「今後は、ペットボトルや缶の紅茶やコーヒーを購入する人々が減っていくと思われます。『スターバックス』やコンビニで入れたてのコーヒーを注文したりと、できたての味を好む機運が高まりつつあるからです。ドリンクに対する消費者の考え方が変化してきているのでしょう。
またコロナ禍で外出規制が設けられましたから、街中では自動販売機を撤去する流れもありました。水筒やタンブラーを持ち歩いて外出する人も増えてきましたし、自動販売機はこのまま数を減らしていく可能性が高いでしょう」(同)
自動販売機が減りつつあるのであれば、自動販売機でストレートティーの缶紅茶にお目にかかれる機会はさらに減るということ。もし見かけた際は記録として写真を撮っておくのもいいかもしれない。
(取材・文=逢ヶ瀬十吾・文月/A4studio、協力=久須美雅士/清涼飲料水研究家)
提供元・Business Journal
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