フォーミュラEシーズン10も残り4戦。そのうちの2戦、ダブルヘッダーがアメリカ・オレゴン州のポートランドで開催された。
このコースはインディマシンが走行するパーマネントコース。全長は3.19kmとコンパクトで12個のコーナーで構成されている。コース幅が広い分フォーミュラEでは4ワイドも見られそうだ。
第12戦を終えた時点でジャガーのニック・キャシディが167ptでポイントリーダー。2位にポルシェのパスカル・ヴェアラインで142pt、3位ジャガーのミッチ・エバンス132ptという順。期待されるニッサンのオリバー・ローランドがなんとこの第13戦と14戦を体調不良を理由に欠場。ローランドは131ptで4番手につけていたが、ここにきて2戦を0ptとなるため、チャンピオンシップ争いでは厳しい状況になる。
ニッサンは代わりにカイオ・コレを代役で出場させた。カイオは今季からシミュレーション・ドライバー兼リザーブドライバーで、これまでF4、F3、F2と経験し、今季はインディカーの下部クラスに出場しているブラジル人ドライバーだ。カイオはFPでいきなり上位タイムをたたき出し、周囲を驚かせている。フォーミュラレースを経験しているだけに、シミュレーション機会が増えれば増えるほどリアルでも速く走れるという典型な展開を見せていた。
予選
さて、グループ予選A組ではヒューズ、エバンス、ディ・グラッシ、モルタラがデュエルスに進出。途中セッテ・カマラが暫定3位だったが検証の結果、タイム抹消処分になりモルタラが繰り上げられた。
グループB組予選はERTのダン・ティクタムがトップ通過し、つづいてダ・コスタ、フラインス、ナトという順。チャンピオンシップを競うキャシディ、ヴェアラインの2人が揃ってグループ予選を通過できなかった。
デュエルスでは、チャンピオンシップを争うメンバーは3位エバンスと7位ダ・コスタだけで、ダ・コスタはキャシディとは83点差があり、チャンピオンの可能性は低い。そうなると、ポールポジションの3ptは3位のエバンスが是が非でも欲しいという状況だ。
デュエルス最初のQFで、そのダ・コスタはフラインスに大きくリードしていたものの、難しいターン10を慎重に走り、一気にリードを失い、QFで敗退してしまった。一方エバンスはQFでディ・グラッシを下し、SFでヒューズに勝利。そしてファイナルではナトに勝ち、見事ポールポジションを獲得。
貴重な3点を手に入れ、チャンピオンシップ2位のヴェアラインとは7pt差、トップのキャシディとは32pt差とした。この結果チャンピオン争いで可能性を残しているのはランキング8位のマキシミリアン・ギュンターまでとなった。
ちなみにニッサンのサッシャはグループ予選を敗退し、ローランドの代役カイオ・コレにも遅れをとり精彩を欠いたままだ。シーズン9ではポールポジションを取る活躍までしたサッシャだが、このシーズン10では開幕からずっと調子が上がらないままなのだ。ローランドが好調なだけに、ここはいいところを見せてもらいたい。カイオ・コレは13位、サッシャは15位からのスタートになった。
決勝
決勝は27周で競う。アタックモードは6分間を2回に分けて使う義務がある。フォーミュラEはレースの序盤は空気抵抗等のエネルギーロスを嫌い、トップ争いを激しく行なわない傾向になりつつある。レース中盤でポジションを上げ、終盤のラスト数周で順位を奪い合う展開がこのところの定番作戦になっている。
今回のポートランドはコース幅も広いため、チームプレイも取りやすいため、どんな戦略になるのか注目される。純粋な順位争いがないだけに見方も難しくなってきているのだ。
予想どおりゆっくりとしたスタートが切られ1コーナーでのホールショット争いはなく、エバンスはヒューズに譲るように2番手でコーナーをクリアした。スタートでアクセルを踏み込んだフル加速をするシーンはないという不思議なレースへと姿を変えた。
序盤はアタックモードの消化、エネマネを考えバッテリー消費を抑える展開であり、当然順位も激しく入れ替わるが、レース順位ではなくエネルギーを抑えたための順位であるため、順位を意識すること自体が無意味になっている。展開としては10位以内にポジションしていれば終盤の展開でトップになれるというわけだ。
予定どおりキャシディはレース中盤で10位にいたが、なんと12周目にはトップに立った。これまでダ・コスタ、フラインス、エバンス、ミュラーいった顔ぶれで展開していたが、一気に顔ぶれが変わるのもフォーミュラEの難しいところだ。
レース終盤、アディショナルラップがないことがわかるとレーススピードは上がり、いよいよ本番レースという見方に変わる。ランキングトップのキャシディはしっかりトップグループをエバンスと共に作り、ダ・コスタ、フラインス、そしてランキング6位のヴェルニューも顔を出している。
24周目残り4周というところで、トップにキャシディ、そしてダ・コスタの前にエバンスが入ることでジャガーのワン・ツー体勢ができた。エバンスは序盤に他車との接触で5秒ペナルティが確定しており、2位のポジションは確実に降格することがわかっているため、キャシディを逃し、3位以下をブロックする役目になった。
そして26周目の第10コーナーまではジャガーのワン・ツーが確実に見えていたが、なんとキャシディが単独スピンを喫した。この10コーナーは予選の時から飛び出すマシンが多く、デュエルスでもダ・コスタが安全マージンをとった場所だ。そのためデュエルスの敗退をした場所でもあり、このレースの鬼門という場所だった。まさにレースは最後までわからないという結果になったのだ。
レースはダ・コスタが優勝し、2位フラインス、3位ヴェルニュー、4位モルタラ、5位ミュラー、6位デニス、7位バード、8位エバンス、9位ヴァンドーン、10位ヴェアラインという結果で、まさにチャンピオンシップに影響しない顔ぶれが上位に入り、ヴェルニューがジワリとポイントを重ねているあたりはさすがベテランという印象だ。
結局キャシディは18位まで順位を落とし、ノーポイント。ヴェアラインも10位ゴールで1ptしか獲得できず、エバンスも結果は8位だった。つまり、チャンピオンシップを争う上位陣が揃ってポイントを獲得できず、大きな変動の起きなかったレースと言える。
つづく第14戦は翌日に同じコースで、1周少ない26周となり、新たなエネマネデータを投入して、チャンピオンシップを競うことになる。
第13戦終了時点 | Driver | Point |
---|---|---|
1位 | ニック・キャシディ | 167 |
2位 | パスカル・ヴェアライン | 143 |
3位 | ミッチ・エバンス | 140 |
4位 | オリバー・ローランド | 131 |
5位 | ジェイク・デニス | 121 |
6位 | ジャン・エリック・ヴェルニュ | 116 |
7位 | アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ | 109 |
第13戦終了時点 | Team | Point |
---|---|---|
1位 | JAGUAR TCS RACING | 307 |
2位 | TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM | 252 |
3位 | DS PENSKE | 171 |
4位 | ANDRETTI FORMULA E | 161 |
5位 | NISSAN FORMULA E TEAM | 157 |
6位 | NEOM MCLAREN FORMULA E TEAM | 95 |
7位 | MASERATI MSG RACING | 77 |
8位 | ENVISION RACING | 67 |
9位 | ABT CUPRA FORMULA E TEAM | 30 |
10位 | MAHINDRA RACING | 25 |
11位 | ERT FORMULA E TEAM | 23 |
第13戦終了時点 | Manufacturer | Point |
---|---|---|
1位 | Porche | 370 |
2位 | Jaguar | 354 |
3位 | Nissan | 242 |
4位 | Stellantis | 230 |
5位 | Mahindra | |
6位 | ERT | 23 |
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