V12はフェラーリの誇り。特別な意味を持つFRスポーツ発進

 マラネッロの新型フラッグシップが誕生した。しかもクーペとスパイダーの同時デビューである。その名は12Cilindri。日本語表記は、イタリア語の発音が正式採用され「ドーディチ・チリンドリ」と呼ぶ。英語でいうところの12シリンダー。つまりはフェラーリ12気筒というわけだ。直球ど真ん中のネーミングである。

【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 マラネッロはそれだけV12エンジンに誇りを持っている。何しろフェラーリ初のモデルが12気筒車だった。ドーディッチ・チリンドリのエンジン型式はF140HD。エンツォ・フェラーリ(2002年発表)から続くV12自然吸気の系譜に連なる新設計エンジンである。

 完全フロントミッドに搭載されるF140HDは812コンペティチオーネ用F140HBをベースに開発された。総排気量は6.5リッターで、最高出力830ps/9250rpm、最大許容回転数9500rpmといったスペックもまったく同じである。

 一方で最大トルクは678Nmと若干下がった。最高出力発生回転を7250rpmと250rpm上げてHB型と同じ馬力を稼いだ結果であり、排出ガスや車外騒音のレギュレーション対応のため、排気系をメインに再設計したことが影響している。

【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 とはいえ新たに8速となったDCTのギア比や変速プログラム、革新的なトルク制御システム「アスピレーテッド・トルク・シェイピング」(ATS)により、ドライバーの感じる速さは、従来以上だとマラネッロは主張する。

 そのほか車体の剛性アップや軽量化といった基本的な取り組みに加え、ホイールベースは20mm短くなり、各種電子制御技術(ヴァーチャルショートホイールベースやサイドスリップコントロール8.0など)のブラッシュアップ、リアを左右独立でコントロールする4WS、V12モデル用としては初となるブレーキbyワイヤ(ABS Evoと6w-CDSセンサー)など、パフォーマンスの進化は多岐にわたる。まさに先進V12フラッグシップである。

最新「12気筒」は伝統と革新を融合。圧倒的に美しく、そして速い

 マラネッロのデザインセンターで実車をチェックする。そのスタイリングはヘリテージとモダンを見事にミックスしていた。中でもフロントノーズは1970年代の名車、デイトナのモダナイズにも見える。中央のブラックアウトされた部分はプレキシグラスモデルと似るし、デイタイムライトとして機能するライト下のフラップはその昔の分割バンパーに見えてくる。

 フロントフェンダーからリアエンドへと至るダブルキャラクターライン、ルーフからリアに向かっての柔らかな造形もデイトナを彷彿させる。グラマラスなリアフェンダーは275GTBのようだ。ちなみにフロントフードはプロサングエと同様のコファンゴスタイル、前ヒンジ開きだ。

 真横からの眺めも印象的だった。ホイールベースは短く、ふくよかなリアフェンダーと尖ったロングノーズが恐ろしいほど強調されている。小さなキャビンはかなり後方に位置し、リアフェンダーに載っかっているかのよう。そしてノーズの低さはV12エンジンがフロントミッドに収まっているとは、とても思えない。

【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 12チリンドリ・クーペで際立って個性的なのは、リアセクションである。デザインチームが 「デルタウイングシェイプ」と呼ぶユニークでウルトラモダンなモチーフが使われた。

 ルーフからリアエンドにかけてブラック→ボディカラー→ブラックと大胆に3分割されている。ガラスルーフもしくはカーボンファイバーパネルとサイドウィンドウが最初の黒いエリア。2つ目の黒いエリアはリアウィンドウとリッド、そして新たな空力アイテムとして採用された左右のエアロフラップである。この黒いエリアの間をリアフェンダーからピラー、ルーフの一部へと続くボディ同色エリアが「前進する矢印」のように区切っている。

 一方、812GTSとまったく同じ開閉式電動ハードルーフパネル(14秒で開閉、45km/h以下で操作可能)を使ったスパイダーは、この独特なモチーフが若干弱まって見える。その代わり往年のロードスタースタイルを得て素直にかっこいい。

 個性的なエクステリアは空力性能を可能な限り高めた結果だ。左右のリアフラップはダウンフォースが積極的に必要とされる速度域(40〜300km/h)において加速度に応じ、自動的に作動する。

【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

 インテリアもまたユニークでモダンだ。ローマ、プロサングエとデュアルコクピットスタイルを採用してきたが、そのコンセプトが12チリンドリで極まった。ほぼシンメトリーなコクーンが2つ並び、デルタウイング形状をしたフローティング風のブリッジがその間を繋ぐ。なるほどこれは「選ばれし者たち」(for the Few)のコクピットである。

 ローマやプロサングエといったGTモデルと、296やSF90といったスポーツモデルの中間に位置する12チリンドリ。クーペのデリバリーは2024年末、スパイダーは2025年初頭から始まる。

フェラーリ12Cilindri 主要諸元

【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

モデル=12Cilindri
全長×全幅×全高=4733×2176×1292mm
ホイールベース=2700mm
トレッド=フロント:1686/リア:1645mm
乾燥車重=1560kg
重量配分=フロント:48.4/リア:51.6
エンジン=6496cc・V 12DOHC48V(ドライサンプ)
最高出力=830ps/9250rpm
最大トルク=678Nm/7250rpm
最高許容回転数=9500rpm
圧縮比=13.5対1
トランスミッション=8速DCT
サスペンション=前後マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:275/35R21/リア:315/35R21
駆動方式=FR
乗車定員=2名
0→100km/h加速=2.9秒
0→200km/h加速=7.9秒
最高速度=340km/h

【魅惑のスーパースポーツ】究極「12気筒」、フェラーリのフラッグシップ「12 Cilindri=ドーディッチ・チリンドリ」の衝撃
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

文・西川淳/提供元・CAR and DRIVER

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