運転免許を取得する際、ほとんどの方は自動車教習所に通ったうえで試験を受けていると考えられます。一方で、教習所に通う以外にも免許を取得する方法はあり、運転免許試験場で「一発試験」と呼ばれる検定に合格することにより、通常と同様に免許を得ることができます。

多くの場合、一発試験を受けるのは免許の失効や取消処分を受けた人など、「以前免許を所持していたドライバー」です。そのため「一発試験の合格率は高いのでは?」と思ってしまいますが、なんでも巷では「鬼畜難易度の試験」として恐れられているというのです。

一体、一発試験の難しさはどこにあるのでしょうか。今回は一発試験を受験したことのある方々に、当時の体験談について聞きました。

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「どこが減点されているのか」がわからない……

「どこが減点されているのか」がわからない……

「ゲームで慣れてるし余裕かと思ってた…」教習所に通わない“一発試験”の難易度は?実際に受験した人は「受かる気がしない」
(画像=©mapo/stock.adobe.com、『MOBY』より 引用)

一発試験を利用する方に多いのが、免許の更新期限を忘れてしまう「うっかり失効」によって、もともと所持していた免許が無効になってしまったケースです。更新期限を過ぎても、半年以内であれば正式な失効とはならず、試験場や免許センターなどで所定の手続きを済ませれば再取得が可能です。

しかし、免許の更新期限から半年を過ぎてしまうと、手続きをしても「仮免許」のみの取得となり、本免許は再度試験を受け直す必要があります。また1年以上が経過すると、仮免許も取得できず、完全にゼロから取得しなければいけません。

「免許更新をすっかり忘れたまま1年以上が過ぎて、完全に失効してしまいました。公認の教習所に通い直すのももったいないと思い、一発試験を受けたのですが、技能試験では全部で9回落ちましたね。

教習所での試験であれば、落ちたとしてもどこが悪かったのか詳しく教えてくれますが、一発試験だとそれがわからなくて。一応、試験後のアドバイスみたいなものはあるんですけど、抽象的でわかりにくいんですよね。『全体的に確認が足りません』みたいな。

試験官によっては書類にチェックする動きで『あ、減点されたな』っていうのがわかるんですけど、試験中あえて動かないようにしている試験官もいるのか、全然そんな素振りはなかったのに、不合格になっていたりとか。

合格になったときも、正直それまでと何が違ったのかわからず、結局自分の運転を見直す機会にもなりませんでしたね」(40代男性)

一発試験は、教習所での試験に比べて「受かるためのポイント」を押さえるのが難しいようです。慣れたドライバーであっても、安全確認のタイミングや運転姿勢など、細かい「クセ」で何度も減点されてしまうなど、「どこを見られているのか」が把握しにくいことが一因としてあるのかもしれません。

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スケジュール面での苦労も

スケジュール面での苦労も

「ゲームで慣れてるし余裕かと思ってた…」教習所に通わない“一発試験”の難易度は?実際に受験した人は「受かる気がしない」
(画像=@J_News_photo/stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

さらに、一発試験のハードルを高くしているのが「手続き」の煩雑さだといいます。社会人として働いている人も多いなか、平日のみの試験に苦労する受験者もいるようです。

「うっかり失効から半年が過ぎてしまい、最初は試験場で本免試験を受けることにしたのですが、3回不合格になってしまって。あまりのハードルの高さに断念し、教習所に通い直しました。

まずそもそも、試験は平日にしかやっていませんし、試験の予約を取るだけでもアクセスの悪い試験場にまで直接足を運ばなければいけませんでした。しかも試験に落ちてしまうと、また2週間か3週間先じゃないと予約が空いていない状況で……。

毎回有給休暇を使うのも難しいですし、仕事をしながらだと、かなり厳しいものがありましたね。

試験ももう、受かる気がしなかったです。試験官が警察の人だっていうのは聞いていましたけど、やっぱり3回とも厳つい雰囲気の人で、鋭い目つきと厳しい口調だけでもう身体が固まってしまい、毎回パニック状態でした。

最初の試験で同乗した受験者が、一時停止が甘かったか何かで補助ブレーキを踏まれ、『しっかり止まって!』と怒鳴られているのを見て、軽くトラウマになってしまったというか。普通の生活からいきなりあの圧は、正直縮み上がっちゃいますね」(30代女性)

試験場や免許センターの職員は基本的に警察官であり、とくに技能試験の試験官は「巡査部長以上の階級を有する警察官」とされています。普段の生活では経験しないようなピリピリ感に気圧され、平常心を保てなくなってしまう受験者も多いのでしょう。

とはいえ受験者に運転免許を与えることは、「誰かの命を奪うかもしれない乗り物の操作を認める」ことを意味しますから、本来であれば相応の「厳しさ」が求められるのかもしれません。

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えっ、コレで減点されちゃうの?

えっ、コレで減点されちゃうの?

「ゲームで慣れてるし余裕かと思ってた…」教習所に通わない“一発試験”の難易度は?実際に受験した人は「受かる気がしない」
(画像=©キャプテンフック /stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

一発試験を経験した人たちからしばしば聞かれるのが、「教習所での試験に比べて採点ポイントが厳しい」といった話です。教習所にとって教習生は「お客様」としての面がありますが、試験場の一発試験では単純に「試験官と受験生」の関係となるため、妥協が生じにくいといった見解も聞かれます。

「スピード違反で免許取消になり、1年の欠格期間のあと、再取得のために試験場で一発試験を受けました。それまでMT車に乗っていたので、再取得の際もMT免許を選択したんです。いざ受けてみると、チェックされるポイントが教習所に比べてはるかに厳しかったですね。

よく覚えているのは、カーブに入る前にシフトチェンジしようと、少し早いタイミングでレバーに手を伸ばして準備していたら、『片手運転はやめましょうか』と指摘されたことです。自分としては、レバーを触るタイミングが若干早かったかな、くらいの感覚だったので、『これはヤバい』と思いましたね。

あとは坂道発進で、サイドブレーキを下げるタイミングを少し誤り、車体が一瞬後ろに下がったのですが、そこでも『はい、逆行ね』と。ほんとに数センチ下がっただけで、以前教習所では『このくらいなら減点されないよ』といわれていた程度だったと思うのですが……。

結局仮免で2回落ちてしまいましたが、本免は1回で合格できました。とにかく減点項目を頭に叩き込んで、自分を『マニュアルに従って動く機械』のように思い込むようにしたら、うまくいくようになりましたね」(30代男性)

MT車の坂道発進において、進行方向とは逆に進んでしまう「逆行」には3つの段階があり、0.3メートル以上0.5メートル未満が「小」で10点減点、0.5メートル以上1メートル未満が「中」で20点減点、1メートル以上が「大」で検定中止の扱いとなります。ただしこれらはあくまで目安としての数値であり、実際には現場の試験官の感覚によって左右される面もあると考えられます。

そのほかにも、減点基準に「グレーゾーン」が残るポイントはとくに、「教習所は甘く、試験場は厳しい」といった傾向になりやすいのかもしれません。

このように、免許の失効や取消処分を受けてしまうと、再取得の労力はかなり大きくなる傾向にあるようです。できることなら一発試験を受験することがないよう、免許の更新期限は定期的に確認し、日々法規に則った運転に努めたいところですね。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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