イタリアのカリアリ大学(UniCa)で行われたラット研究により、アルコールとエナジードリンクの「カクテル」は脳に永続的な後遺症を残すことが示されました。
アルコールとエナジードリンクのカクテルは、エタノールの鎮静効果とエナジードリンクの高揚効果を組合わせることで、自分が酔っているかどうかをわからなくさせ、通常よりも深い飲酒につながることが知られています。
研究によると、この危険なカクテルを若い頃から飲んでいた人は、後年の調査でも発見可能なほど脳に永続的な変化が起きてしまっており、記憶力の低下などの悪影響が起きている可能性が示されました。
アルコールとエナジードリンクは脳で何を起こしてしまったのでしょうか?
研究内容の詳細は『Neuropharmacology』にて公開されています。
目次
- アルコールとエナジードリンクの危険な「カクテル」
- アルコールとエナジードリンクの組み合わせは脳に永続的な後遺症を残す
アルコールとエナジードリンクの危険な「カクテル」
色んな種類のお酒を飲む行為を「ちゃんぽん」と言ったりしますが、「ちゃんぽんすると悪酔いする」という話はよく耳にします。
ちゃんぽんの危険性については医学的にも研究されており、特定の成分がアルコールの吸収速度を変えることが知られています。
例えば、炭酸飲料を含むお酒(ビールやシャンパン)は、胃の内容物を早く腸に送るため、アルコールの吸収が速くなります。
一方近年では、アルコールとエナジードリンクを混ぜて飲む行為の危険性が注目されています。
この組み合わせは一般的に「コカボム」や「レッドブルウォッカ」などと呼ばれ、特に若者の間で人気があります。
2000年代後半には、フォーロコやスパークスなど、エナジードリンクとアルコールを一緒にパッケージした缶入り飲料が市場に溢れ、人気を博しました。
しかし、2010年に食品医薬品局(FDA)と連邦取引委員会(FTC)は、これらの飲料を製造する企業に対して警告を発しました。
これらの飲料が健康に及ぼす危険性が指摘されたためです。
エナジードリンクは、カフェイン、砂糖、タウリン、ガラナ、ビタミンBなどの成分を高濃度に含んでおり、エネルギーや注意力、身体能力を高めるために作られています。
しかし、エナジードリンクがアルコールの鎮静効果を覆い隠し、飲んだ量を意識しにくくするという問題があります。
エナジードリンクに含まれる非常に高濃度のカフェインは、アルコールの眠気効果を鈍らせるため、「完全に酔っている」状態を自覚しにくくします。
その結果、飲み過ぎたときに体が通常送る信号を見逃し、通常よりも多くのアルコールを摂取してしまう可能性があります。
これらの特定のドリンクが市場から撤退したとしても、エナジードリンクとアルコールを混ぜるカクテルは依然として簡単に作れるため、若者を中心に人気があります。
アルコールには鎮静作用があり、リラックスした気分にさせる一方で、疲労感を感じさせる残留効果もあります。
リラックスしたいが疲れたくないという人は、興奮剤であるカフェインを加えることで気分を盛り上げ、疲労感を感じずにリラックスした気分を楽しむことができます。
しかし、研究者の中にはアルコールとカフェインの組み合わせを「最悪の組み合わせ」と表現する人もいます。
そこで今回、カリアリ大学の研究者たちは、アルコールとエナジードリンクが脳に与える影響を調べるため、ラットを用いた実験を行いました。