株式会社 識学 上席コンサルタント コンサルティング部 課長 羽石 晋

弱者を守るための経営と見なされている「360度評価」の注意点について解説していきます。

360度評価には多くのメリットがありますが、これを採用すればあらゆる組織が例外なく成長するというわけではありません。360度評価を導入するか迷っている人や、すでに始めたけれどもいまいち効果が感じられないと悩む人にとっては、本記事が助けになるはずです。

360度評価とは

働きたい会社の理想像は人によってさまざまですが、働きたくない会社のイメージは割と似通います。それは、利益ばかりを追いかけて社員に激務を強いる、いわゆるブラック企業です。

「そんな会社にしないために」との考えから生まれた、現場の声一つひとつを拾い上げようとする手法が360度評価です。360度評価は、1990年代に人材育成のメソッドとして大いに発展しました。部下、同僚、上司からの評価をもとにそのフィードバックを通して適切な教育を行っていくことが主目的とされています。

一方で、管理職に対する抑止力としての機能も期待されています。とある外資系の会社では、本国から来た社長の評価はすべて360度評価によるものでした。それには本国の目の届かないところで社長が暴走しないようにするという意味合いがあります。

さらに、部下や現場の声をしっかり上層部が拾い上げるという機能も360度評価にはあると言われています。現場の従業員が声を上げられず過酷な労働を強制されることがあってはなりません。利益を追い求めるあまり過度な労働を強いる管理職をとがめ、現場で泣き寝入りするような社員をなくしていく。360度評価は、まさに「弱者を守る経営」なのです。

また、現場の「困っていること」に経営のヒントが隠されていることも多くありますから、360度評価でそれを見つけることができるとも考えられています。

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