ADHDが約600万人、不安障害が約580万人、うつ病が約270万人──米国で2016年から2019年の間に、それぞれの診断を受けた3歳から17歳の子どもの数だ(同国疾病対策予防センター調べ)。

このような現状に警鐘を鳴らし、テクノロジーで子どものメンタルヘルスの問題に取り組むスタートアップがある。米国発のMEandMineだ。

専門性と設立者自身の経験が起業につながる

MEandMineは、2019年にElinor Huang氏らによって共同設立された。同氏は医療分野でキャリアを積み、特に医療テクノロジーと神経科学を専門としてきた。その中で、精神疾患を抱える子どもの割合が上昇しているのを目の当たりにしてきた。大学時代には同級生が自殺するという、メンタルヘルス問題による深刻なアクシデントに直面したという。

精神疾患の症状がある人が治療を受けるまでには通常11年かかると言われる中、Elinor氏にはメンタルの問題をリアルタイムで把握できたら、という思いがあった。学校でも子どもたちの心の健康状態を評価する機会はあるが、通常は年2回に留まる。

この問題に取り組むため、Elinor氏は1000人の保護者との対話や、ハーバード大学の子ども発達センターとの協議を経てMEandMineを設立。

創業メンバーは小児科医・心理学者・教育者といった顔ぶれで、彼らの中にはADHDや高機能自閉症の子どもを持つ者もいた。

子どもの心の状態をリアルタイムかつ高精度で把握

Image Credits: MEandMine

MEandMineは学習キットも手掛けているが、最大の特徴は、アプリで子どもたちのメンタルヘルス改善に取り組んでいる点だ。

教師はいつでも子どもたちをサポートしたいと思うもの。それでも、なかには感情を表に出さない子どもや、言葉で表現するのが苦手な子どももいる。MEandMineは、生徒がアプリのゲームを楽しむ中でデータを収集し、リスクを抱える子どもを特定するという。

これにより、“リアルタイムで”子どもの心の健康状態を把握し、早期発見と迅速な対応につなげる狙いだ。さらに教師はデータに基づいて、どのような心の問題に取り組むべきかを明確にできる。

Image Credits: MEandMine

MEandMineがリスクを検知する精度にも、目を見張るものがある。ノースウェスタン大学の心理学チームによる研究結果によると、学校カウンセラーによって「リスクを抱えている」とされた子どもの90%以上が、MEandMineでの幸福指数が中央値より低いことがわかったという。

ちなみにMEandMineのゲームは、生徒が自己制御スキルを身に付けるのにも役立つ。子どもはゲームでキャラクターを育成する中で、心を落ち着かせたり、大きな感情を処理したりすることを学べる。ゲームは200種類以上あり、独自のアルゴリズムにより、子どもひとりひとりに最適のものを選んでくれるという。