失明寸前に陥るも、無事に治療に成功!

応急処置の2日後、男性の右目の痛みと視力は劇的に悪化し始めました。

虹彩(瞳孔を囲んでいる部分)の周りの血管が出血し、気づいたら男性は右目の視力をほとんど失っていたのです。

左目を閉じると、かろうじて自分の指を数えることができるくらいだったといいます。

そこでようやく男性は専門のウィルス眼科病院で診察を受けました。

ショシャニー氏らは男性の目で何が起こっているかをよく見るために、蛍光染料を使って患部を染色することに。

その状態で眼球を10〜16倍に拡大した結果、虹彩と白眼の境界のあたりに蜂の針の先端が埋まっていたことが判明したのです。

こちらが実際の画像ですが、苦手な方は閲覧をお控えください。(※ 音声はありません)

埋め込まれた針のせいで、眼球全体を覆う薄い粘膜が炎症を起こしており、さらに瞳孔と虹彩を覆う角膜も腫れ上がっていました。

こうした異常のせいで右目の視力が大幅に落ちていたと見られます。

そこで医療チームは眼科専用のマイクロ鉗子(かんし)を用いて、男性の右目から残りの針を除去することに成功しました。

その後、抗菌薬とステロイドを含む点眼薬を処方して様子を見ることに。

すると5カ月後、男性の右目の視力は大きく改善し、生活に支障のないレベルまで回復したとのことです。

除去された蜂の針の拡大図
除去された蜂の針の拡大図 / Credit: Talia N. Shoshany et al., The New England Journal of Medicine homepage(2024), canva/ナゾロジー編集部

今回の症例のように、眼球を蜂に刺されるケースは極めて稀であり、ショシャニー氏も自身の眼科医のキャリアの中では初めてだったといいます。

しかしもし眼球を刺されることがあれば、慎重な処置が必要になることは確かです。

自分で無理に抜こうとすれば、男性のように針が折れて目の中に残ってしまうリスクがあります。

ショシャニー氏らは「ハチに目を刺された場合は、眼の中に針が残って重度の炎症を起こす危険性があるため、ただちに専門の眼科で診察を受けてください」と呼びかけました。

同じ目に遭いたくなければ、とにかくハチには近づかないことですね。

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参考文献

Horrific Bee Sting Leaves Barbed Stinger Hiding in a Man’s Eyeball
https://www.sciencealert.com/horrific-bee-sting-leaves-barbed-stinger-hiding-in-a-mans-eyeball

Man suffers rare bee sting directly to the eyeball—it didn’t go well
https://arstechnica.com/science/2024/06/doctors-pull-bee-stinger-out-of-mans-bloody-eyeball-after-days-of-pain/

元論文

Ocular Bee Sting
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm2400652

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部