看護師の人手不足や「燃え尽き症候群」といった問題に立ち向かい、彼らの満足度、仕事のクオリティを同時に向上する──そんな画期的なサービスを提供しているのが、米国発のスタートアップApricot Technologies(以下、Apricot)だ。同社は、訪問看護師の事務作業を生成AIで効率化するサービスを展開している。
世界の在宅医療市場規模も堅調な推移が見込まれている。IMARCの調査によれば、2023年に3,922億ドルだった同市場は2024年から2032年にかけて年平均7.87%で成長し、2032年までには7,917億ドルに達する見込みだ。
市場の伸びを後押しする要因としては、慢性疾患の増加や医療技術の進歩などが挙げられている。
在宅医療の課題を肌で感じて起業
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Image Credits: Apricot Technologies
同氏は在宅医療を手掛ける施設である「Accentra Home Health & Hospice」のCEOも務めている。この施設も拠点はオクラホマで、設立は2004年にさかのぼる。
Trent氏は常に在宅医療に革命を起こすことを目指してきた。その中で人手不足や看護師の燃え尽き、「メディケア・アドバンテージ※」などの問題に直面し、Apricotの立ち上げを決意したという。
※メディケアは米国で65歳以上の高齢者や一部の障がい者を対象とした公的な医療保険。メディケア・アドバンテージの加入率が伸びた地域の施設は、収益や利益率に大幅な減少が見られたとする報告がある。
看護師・患者・施設にメリットをもたらす
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Image Credits: Apricot Technologies
まず、関連資料をアップロードすると自動的に取り込まれ、患者に関する記録や、訪問時の確認事項などをまとめてくれる。
次に、訪問を終えた看護師が、Apricotと15分ほど面談するという(AIに向かって話すのかなど、どのような形かについて情報は得られていない)。面談で看護師が提供した情報や患者に関するデータを解析し、訪問診療医の監督のもとで書類を作成する。
最後に、看護師が書類を承認すれば、あとはApricotがセキュリティも担保しつつ保存してくれる。
これにより看護師は、自分の最も得意とする「患者のケア」に集中できるようになる。これは患者にとっても間違いなくメリットだろう。さらに看護師の満足度向上に寄与するだけでなく、より多くの患者を受け入れることで利益率も高めている。また、多くの施設は収益を犠牲にすることなくメディケア・アドバンテージ加入者を受け入れることが可能になっているという。
同社公式サイトには「在宅医療における効率性とケアの質を再定義したと言っても過言ではない」とあるが、まさにそのとおりともいえよう。