神話に登場する幻想生物グリフォンは、ワシ(あるいはタカ)の翼と上半身、ライオンの下半身を持つ怪物として描かれます。
この姿に関しては、「恐竜の化石にもとづいて描かれた」という説が長らく支持されてきました。
しかし、最新の研究により、この理論には多くの疑問が投げかけられています。
特に今回、中央アジアのプロトケラトプスの化石がグリフォンの起源とされる説に対し、イギリスのポーツマス大学(University of Portsmouth)に所属するマーク・P・ウィットン氏ら研究チームは、その根拠の薄さを指摘し、より詳細な検証を行いました。
彼らによると、グリフォンが恐竜化石を元に描かれたという説明は「後付け」であるというのです。
研究の詳細は、2024年6月20日付の学術誌『Interdisciplinary Science Reviews』に掲載されました。
目次
- 神話上のグリフォンはどこから来たのか
- グリフォンは恐竜化石を元に描かれていなかった!?
神話上のグリフォンはどこから来たのか
グリフォンは、ライオンの体とワシの頭と翼を持つ架空の生物であり、古代ギリシャやペルシアの神話に登場します。
彼らは「黄金を守る存在」「神の守護者」として描かれ、多くの文化で神聖視されてきました。
そしてグリフォンの独特で印象的な姿は、古代の芸術作品や文学作品に多く見られます。
例えば、その姿は護符や装飾品、建築物などに頻繁に目にすることが出来ます。
また王権のシンボルとして利用されることもあり、王族や貴族の墓などに描かれてきました。
さらにグリフォンの姿は現代にまで十分に知れ渡っており、映画やゲームなどに度々登場しています。
では、これほどまでによく知られているグリフォンのイメージの起源はどこにあるのでしょうか。
グリフォンの起源に関するアイデアの1つに、「古代人が恐竜化石を発見し、それを元にグリフォンを描いた」というものがあります。
特に、「中央アジアで発見されたプロトケラトプス(学名:Protoceratops)の化石が影響を与えた」という説が有力視されています。
この説は、1990年代に提唱されました。
角竜の一種であるプロトケラトプスの化石が中央アジアで金鉱を探していた古代の遊牧民によって発見され、それが交易路を伝って遠くへ渡り、グリフォンの物語や芸術を生んだというのです。
確かに恐竜という存在を知らずにこの化石を見た場合、頭部の骨の形状はワシやタカなどのくちばしを連想させる気がします。
しかし今回、ウィットン氏ら研究チームは、この説の真実性を調査し、根拠の薄さを指摘しました。