映画や漫画、小説などのSF作品では、義肢が、生身と同じレベルで動かせる機能性の高いものとして描かれます。
作品によっては、「生身より便利で高性能」なんてこともあるでしょう。
最近、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)のヒュー・M・ハー氏ら研究チームは、そんなSFに登場するような脳と神経によって制御できる革新的な義肢の開発に成功しました。
そのバイオニックレッグを使って歩く様子は、まるで生身の足で歩いているように自然です。
まさにサイボーグと言いたくなる高性能な義肢であり、これにより義肢使用者の筋萎縮も抑制できるという。
研究の詳細は、2024年7月1日付の科学誌『Nature Medicine』に掲載されました。
目次
- 従来の義肢の限界
- 脳と神経系で動かすバイオニックレッグ
従来の義肢の限界
SF映画や漫画では、失った身体の一部を機械で補い、生身と同等の能力、もしくは超人的な力を持つキャラクターが登場します。
しかしもはや、これはフィクションではなくなってきているのかもしれません。
MITの最新の研究は、義足使用者がまるで生来の足のように自然に歩くことを可能にする「新しい義足」の開発に成功したのです。
私たちが知っているように、従来の義肢は、基本的な歩行機能を提供してくれるものの、重大な制約がいくつもあります。
例えば、多くの義足は動力を持たず、いわば「足に装着する杖」としての機能しかありません。
また最先端の義足であれば、歩行アルゴリズム、ロボットセンサー、コントローラーを利用していくらかスムーズに歩けるかもしれません。
しかしそれでも、生来の足が生み出す自然な歩行パターンを再現することは不可能です。
特に階段や不均一な地形を歩く際には、一層難しさを感じるものであり、身体のバランスを保つために余分なエネルギーを消費してしまいます。
さらに自分の脳で足(義足)を動かしているわけではないので、どうしても違和感が生まれます。
ところが今回、MITのハー氏ら研究チームは、こうした問題を大きく改善する革新的な義足を開発することに成功しました。