大企業での満額回答が相次いだ2024年の春闘。厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によると、2024年4月の就業者1人当たりの所定内給与は、前年同月比2.3%増と約30年ぶりの高伸率となりました。

一方、7月には新たに411品目が値上げし、3年連続で値上げ品目が1万品目を突破。この物価上昇分の賃上げがないため、実質賃金は25カ月連続で減少しています。

このように個人消費への下押し圧力が強まるなか、「夏のボーナス」が消費促進につながるのでは、と注目を集めています。

株式会社帝国データバンク(以下、帝国データバンク)では、2024年夏季賞与についてのアンケートを実施。賞与の支給状況や企業規模別の平均支給額増減などが明らかとなりました。

企業の85%が賞与支給予定

夏季賞与(※)状況についてたずねたところ、「賞与はあり、増加する」と回答した企業は39.5%で前年比2.1ポイント増となりました。

そのほか、「賞与はあり、変わらない(34.2%)」「賞与はあるが、減少する(11.3%)」を合計すると、85.0%の企業が賞与支給予定という結果に。前年の83.1%から1.9%ポイント増加しており、逆に「賞与なし(10.3%)」は0.9ポイント減少でした。

※従業員1人当たりの平均支給額。ボーナス・一時金・寸志など含む

賞与を増加すると答えた鉄鋼・非鉄・鉱業企業からは、「賃上げムードもあるが、業績が好調なのが1番の要因」という声があがるなど、業績回復の様子がうかがえました。

一方、業績は改善していないものの、物価高騰に対する従業員への経済的負担の軽減・モチベーション維持・向上を理由に賞与を増やすと決めた企業も多数あるようです。

企業規模別では、大企業が前年比4.9ポイント増

次に「賞与が増加する」企業を規模別に見てみると、大企業では前年比4.9ポイント増の47.2%で、全体の39.5%を7.7ポイント上回っていました。「中小企業」は同1.7ポイント増の38.2%、「小規模企業」は同1.9ポイント増の29.2%。

全体との比較においては、小規模企業では増加の割合が大企業に比べて10ポイント低く、企業規模間で格差が生じていることが明らかとなりました。

1人当たりの支給額は前年比平均2.0%増

企業規模間の格差は、従業員1人当たりの夏季賞与平均支給額にも表れているようです。全体平均では前年比2.0%増加したものの、2023年の増加率2.4%を下回る結果に。

「大企業」は4.1%増(前年比0.6ポイント増)でしたが、「中小企業」の増加率は1.7%増(前年比0.5ポイント減)と大企業を2.4ポイント下回っており、規模間格差が目立つ結果となっています。

要因について中小企業からは「大企業は賃上げや賞与の増額を行っているが、中小企業は苦しい」「大企業は利益が大きいようだが、その恩恵は自社のようなサプライヤーには還元されず賞与を減らすことになった」と、厳しい声も見受けられました。

今回の調査では、賞与支給予定の企業は8割以上と多いものの、一方で原料費の高騰などによる収益悪化を理由に賞与を減らすという企業も少なくはないことが分かりました。

帝国データバンクは「今後はエネルギー価格の高騰に対する政府の補助金の終了などによる、電気代の値上がりや、円安の進行などを背景とした食品の値上げなどにより、消費拡大への効果は限定的にとどまる可能性もある」と分析。

消費回復への効果を得るためには、物価の高騰に負けない賞与・賃金の上昇、および「持続的な賃上げ」が必要なのかもしれません。