ウィリアム・キッドは、17世紀にスコットランドで生まれた海賊船の船長であり、「キャプテン・キッド」の呼び名で知られている。ニューヨークに移住し貿易船の船長となった彼は、対仏植民地戦争の勃発により西インド諸島へ渡り、政府から敵国の船を攻撃し略奪が認められた「私掠船」の船長となった。その後、徐々に対象外の商船までも襲う本格的な海賊船となり、1699年にニューヨークへ帰港し捕らえられ、1701年に絞首刑となった。

 キャプテン・キッドは、処刑される直前に「ある場所に財宝を隠した」「処刑を取りやめればありかを教える」と叫んだものの、処刑人はこれを無視し彼を処刑した。命乞いのための口からでまかせであったのかは定かではないが、これ以来、世界のどこかにキャプテン・キッドの財宝が眠っているという伝説が世界中で注目を集めるようになっていった。

 このキャプテン・キッドの財宝は、資産価値にして20億~2兆円とも言われているという。2015年には、米探検家バリー・クリフォードによって、マダガスカル沖の海底からキャプテン・キッドの沈没船「アドベンチャー・ギャリー」が発見されたのではないかと話題となり、銀の延べ棒なども発見されたとして大きな注目を集めた。その沈没船がキャプテン・キッドのものであるという確証はまだ得られておらず、また財宝のありかについてもまだ謎のままとなっているのが現状だ。

処刑前の叫びは嘘か真か「キャプテン・キッドの財宝」は日本に眠っている?!
(画像=Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像,『TOCANA』より 引用)

 実は、その財宝が日本に眠っているのではないかという説があるのだ。その候補地とされているのは2ヶ所、いずれも本州から遠く離れた南西部にある島である。

 一つは、宮古列島の大神島だ。

 大神島には、大昔に島民たちが島にやってきた海賊に殺され、二人の兄妹だけが生き残ったという伝承が残っており、現在の島民たちはその二人の子孫であると言われているという。この伝説がキャプテン・キッドのものであるかについての発端は、1938年に社会学者の河村只雄が著した『南方文化の探究』に遡るという。この著書を出典元として1960年代にロンドン・タイムスが「日本の大神島にキャプテン・キッドの財宝が眠る」という旨の記事を掲載、それをニューヨーク・タイムスが転載し、さらに朝日新聞が転載して大々的に報じたことで知られるようになったという。

 それによると、財宝が眠る場所は島の聖地と言われる洞窟「イワヌイワヌパナ」、あるいは島にある「後生山」のいずれかではないかということである。また噂では、財宝を探しに行った者たちは皆祟りに見舞われてしまうため、今でも財宝は発見されずにいるのだという。

処刑前の叫びは嘘か真か「キャプテン・キッドの財宝」は日本に眠っている?!
(画像=大神島。所在地は沖縄県宮古島市。 663highland – 投稿者自身による著作物, CC 表示 2.5, リンクによる,『TOCANA』より 引用)

 もう一つは、トカラ列島に浮かぶ宝島だ。ことの発端は1937年に遡る。「コネチカット州サウシントン市米国探偵家秘密情報員」と名乗る手紙が「日本東京、日本領事館」宛に届いた。その手紙は、キャプテン・キッド直筆の地図の写しが同封されており、彼が日本の南西のどこかの島に宝を隠したかもしれないとの旨が記されていたというのだ。外務省は相手にしなかったそうだが、聞きつけた新聞記者によってその手紙の存在が明るみになり、その同封されていた地図の位置がトカラ列島の宝島と一致していたことから、一気に注目が集まるようになったという。

 いかにもな島の名前であるが、日本書紀にはすでにその名前が記載されていることから財宝のことを指す呼び名というわけではない。しかし、この宝島にも海賊の伝承が残っており、元禄11年(1698年)に海外の海賊がやってきて、洞窟へ逃げた島民たちを焼き殺してしばらく滞在していたという。その洞窟で海賊は幾日か過ごし、あとになって財宝をその洞窟に残して島を去っていったのだという。

処刑前の叫びは嘘か真か「キャプテン・キッドの財宝」は日本に眠っている?!
(画像=宝島 Copyright © 地図・空中写真閲覧サービス 国土地理院, Attribution, リンクによる,『TOCANA』より 引用)

 また地図によると、宝のありかは「死の谷と呼ばれる窪地、活火山から噴出する有毒ガスが常によどんでいる」と記されているものの特定には至っておらず、かつては24時間テレビでも調査が行なわれが成果は得られなかった。その他、深さ400~500mもあるという島内最大の鍾乳洞「観音洞」が隠し場所ではないかとの説もあり、イギリスの文豪スティブンソンの小説『宝島』のモデルがこの宝島であったとの言われているとの解説もなされている。財宝が眠る候補地として最も有力であると言われている一方、戦史研究家・埋蔵金研究家である畠山清行によれば、該当する島は実は宝島ではなく「西表島」ではないかとのことだ。

 海賊が残した財宝が日本に眠っている。確実とは言い難い話ではあるが、なんともロマンあふれる話である。

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文=黒蠍けいすけ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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提供元・TOCANA

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