静かでクリーンな電気自動車。一方で「充電インフラの不足」といった課題もある。いくら自宅や車庫で充電しても、出先で充電ポイントがみあたらなければ、走行中に電力不足に陥る可能性は否めない。

こうした課題を解消すべく、輸送車両・船舶などをてがけるスウェーデンの商用車大手スカニアは6月11日、顧客企業の電気自動車への移行を加速するための新会社「Erinion」を設立したと発表。

Erinionは民間および半公共の充電ソリューションを専門とし、2030年までに最低4万カ所の充電ポイントを設置するという目標を掲げている。

電気トラックの導入を加速

老舗スカニアの新会社設立は、「持続可能な物流システムへの移行」という使命の一環だ。同社のソリューションにより、顧客がゼロエミッション車両にスムーズに切り替えられるほか、高い車両稼働率を確保できるという。

スカニアは2030年までにヨーロッパでの販売の50%を電気自動車にすると宣言しており、Erinionはその目標達成に不可欠な存在となる。

スカニアとの実証実験では、Erinionの充電ソリューション導入により設備投資が最大50%削減され、車両1台あたり年間最大1万5000ユーロの運用コストが節減できる可能性が示されている。

Erinionは充電器や制御システムのハードウェアだけでなく、運用サービスやサポートも含む包括的なパッケージも提供。顧客の運用形態に合わせて、充電出力レベルやスケジュール、コスト構造などを柔軟にカスタマイズできる。

Erinionのサービス提供は、スウェーデン、ノルウェー、英国、オランダ、フランス、ドイツの6カ国でスタートし、その後グローバルに拡大する予定だ。

車両ブランドを問わずあらゆる企業が利用可能で、2030年までにヨーロッパで23万台に上ると予測される電気トラックの普及を強力に後押しする。

スカニアグループでエネルギーとインフラを統括するJonas Hernlund氏は「当社のソリューションにより、顧客は安心してコアビジネスに集中できる。専門の充電ユニットが、大規模な充電運用に必要な機器からシステム、資金調達、運用サービスまでを高品質かつコスト効率よく処理する」とコメントした。

老舗スカニアの新たな試み

1891年創業の歴史あるスカニアは、トラックやバスなどの大型商用車や産業・舶用エンジンの世界的メーカーだ。100カ国以上で事業を展開し、グループ全体の従業員数は5万8000人以上に上る。

ガソリンから電気へ。内燃機関の時代の転換を受けても、スカニアは成果を上げてきた。2023年通期の純売上高は前年比28%増の2041億スウェーデンクローナと業績は好調だ。次世代の物流ソリューション開発を加速し、持続可能でスマートな輸送の実現を目指している。

日本でもEV充電器拡充の計画は進む。政府はグリーン成長戦略(2021年6月改定)において、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」との目標を掲げている。これまでに約3万基を全国に整備してきた。

老舗スカニアの革新的な試みは、百年企業を多数抱える日本にも刺激を与えることになるだろう。

(文・嘉島亜麻実)