米Bumper社は6月12日、同社の車両履歴レポートプラットフォーム「Bumper.com」にAI搭載の新機能「Smart Insights」追加を発表した。大容量のレポートから生成AI活用により重要な情報をすばやく分析・抽出するというもの。
北米の巨大な中古車市場では、ディーラーと消費者のみならず個人間での売買も盛んに行われている。中古車購入の際に重要な資料となる車両履歴レポートは、CARFAXやAutoCheckなどの老舗・大手企業が行ってきた。このレポート取得のプロセスにAIを活用するのがSmart Insightsだ。
包括的な中古車データから重要な情報をAIが抽出
中古車の査定で重要となる要素には事故歴やメンテナンス記録、過去の所有者数、走行距離などがある。Smart InsightsのAIは、車両のコンディションや価値を大きく左右するこれらのパラメーターや評価基準に基づき情報を認識・優先するよう訓練されている。
車両固有の状況を考慮に入れた履歴ベースの推定価値を算出することもできるため、より正確な査定が実現する。取得したインサイトを最高から最低までの段階に分けてスコア化することで、分かりやすい評価指数によってユーザーを誘導するという。情報収集に必要な莫大な時間と労力を節約可能
「車両履歴レポートを詳しく見ようとすると、莫大な時間と労力がかかってしまいます。購入者は、必要としている重要データにたどりつけていないのです」と、Bumper.comのプロダクトマネジメント担当シニアディレクター Alessandro Mannino氏は述べる。
「この中古車リサーチの工程がSmart Insightsによって迅速になり、購入者は車両の過去について重要な情報を見逃さずに済みます」
Bumper.comではすでにAIが算出した査定額を閲覧できるが、生成AIの信頼性については潜在的な懸念もある。Bumper社はそれを考慮し、Smart Insights機能の構築にあたって複数の“ガードレール”を活用。情報はレポートから直接参照したものに限り、人間による監督も提行うことで査定価格の正確性を維持するという。競合他社より大幅な低価格を実現
Bumper.comは、「車両履歴レポートを通じて車の所有・売買の体験を改善、より手頃な価格にする」という使命を掲げたプラットフォーム。毎月100万人以上がアクセスし、数千人が毎週レポートを実行、的確な情報を得たうえで購入に至っている。
車両履歴レポートを単一の低価格で提供しており、レポート3件を実行した場合競合他社と比較すると100%以上の節約になるとしている。
運営するBumper社は設立の翌年2021年には事業者向け・一般消費者向けの両方でNMVTIS認証を取得した初の企業となった(NMVTISはNational Motor Vehicle Title Information Systemの略で、「全国自動車所有権情報システム」の意味。自動車の状態や履歴に関する貴重な情報を消費者に提供する電子システム)。アメリカの車両履歴レポートプロバイダー大手といえばCARFAXとAutoCheckで、この2社は比較されることが多い。業界ではかなり後発のBumperだが、サイト上では「Bumper vs CARFAX」と題して競合他社と比較した自社の優位性である低価格やスピードをアピールしている。
Techsaleratorが2024年3月にまとめた「車両履歴データプロバイダートップ企業」には挙げられていないBumperが、今後どこまで大企業に迫れるのか注目したい。
(文・せな)