人生のなかで、運転免許の取得を「大人への階段」のように考える人は少なくないでしょう。それだけに、教習所には特有の緊張感があり、そこでの出来事を長く覚えている人もいると思われます。
とくに「試験での失敗」は、当人や周囲の人にとって印象に残ることがあるようです。今回はドライバーの方々に、「免許の技能試験での失敗談」について話を聞きました。
あのポール、そんな風になってたんだ…
仮免許の技能試験において、教習生にとっての関門となるのが「S字・クランク」でしょう。指定教習所のスケジュールにおいて、仮免許までの技能教習は基本的にAT車で12時限、MT車で15時限であり、車両感覚が十分に身についていない教習生も多いと考えられます。
「仮免の技能試験で、順番が2番目だったので、最初の人の動きを見ながら頭のなかで手順を確認しておこうと思ったんです。でも、その人はドアロックや発進時のウインカーを忘れていて、その時点で『おや?』と思っていました。
運転もちょっと危なっかしい感じがしたのですが、『まぁ自分も他の人から見たらこんなものなのかも』と思っているうち、試験官がクランクに入るよう指示を出しました。
カーブに入る瞬間、『あっ』と思いましたね。明らかにハンドルを切るのが遅くて、その割にスピードが出ていたんです。
案の定、カーブの外側にあるポールに車体がぶつかって、パラパラパラッという音がして。おばあちゃんの家とかにある、玉のれんみたいな感じというか。ぶつかったのをはじめて見たので、こんな音がするのかと妙な気持ちになりました。
それからバックで立て直そうとはしていましたが、今度は内側に入りすぎて脱輪し、少しパニックのようになってしまったのか、何度も切り返すものの行ったり来たりを繰り返すばかりで……。なんとも気まずい時間でした」(20代女性)
普段の教習中であれば、基本的に助手席には指導教官が座っているため、教習車で接触事故を経験する人はそう多くないと思われます。もしかすると、教習生が緊張しており、補助ブレーキが踏まれにくい試験の場は、ポールとの接触なども起きやすいのかもしれません。
なお、上の話にあるように、「脱輪」と「障害物との接触」が同時に起きているような状況は、検定中止に該当するケースが多いと考えられます。ただし仮免の技能試験においては、次回へのフィードバックを与える意味で、試験を形だけ続行させる指導員もいるようです。
半クラの感覚を忘れ…発進できない!
運転免許の技能試験は、仮免・本免ともに減点方式であり、「100点満点中70点以上」で合格とされています。上の「脱輪」のように大きな減点項目もありますが(仮免試験で縁石などに乗り上げてから1.5m未満で停止した場合には20点の減点)、致命的な減点にはならない「細かいミス」も、積み重なれば不合格の原因になってしまいます。
「大学生の頃、サークルやバイトをしながら教習所に通っていたので、スケジュールがかなり空いてしまうことがありました。そのせいで毎回乗るたび、感覚がリセットされちゃうというか。みきわめから仮免試験までの間も、10日以上空いてしまって、かなり不安ではありました。
一応技能試験のポイントはおさらいして向かったのですが、MT免許だったので、そもそもクラッチの操作に不安があって。緊張しながら試験を迎えた直後、案の定最初の発進でエンストしてしまいました。しかも、2回連続で。『あ、もうダメだ』と一気に弱気になってしまいましたね。
その後も坂道発進で1回、クランクで1回、合計で4回もエンストしてしまい、最後は完全に諦めムードでした。その後も仮免の技能で2回落ちて、かなりギリギリのスケジュールで取得したんですよね」(20代男性)
運転免許試験においてMT車のエンストは「特別減点細目」とされ、これは「よくあるミスなので1回目は減点を保留するが、2回目以降は減点対象とし、1回目の保留分も含めて減点する」という措置がなされる項目です。
つまり試験中にエンストをしてしまっても、1回だけなら減点されませんが、2回目をしてしまうと2回分の点数が一気に引かれてしまうのです。仮免試験でのエンストは「5点」の減点対象ですので、4回のエンストにより20点が引かれてしまうことになります。
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緊張で毎回頭が真っ白に
緊張で毎回頭が真っ白に
免許の技能試験には、独特の緊張感がつきまとうものです。緊張から正常な判断ができず、普段であれば考えられないような失敗を起こしてしまうこともあるでしょう。
「昔から極度のあがり症で、緊張すると普段当たり前にできていることが全然できなくなってしまうんです。心臓の音がやたら大きくなって、さあーっと頭が真っ白になるというか。
免許の試験でも、それまではS字やクランクで困ったことなんてなかったのに、急に感覚がわからなくなって、脱輪で2回も仮免に落ちました。
それで『自分はダメな人間だ』と思うと、次の試験で緊張が余計大きくなってしまって、細かい確認作業なんかが疎かになり、5回連続で落ちてしまって。一番ショックだったのは、一時停止無視でブレーキを踏まれてしまったことですね。普段走っているコースで、そんな基本的なところも見落としてしまうのかと。
本免では逆に開き直ったというか、『どうせ落ちるし、とにかく最初は雰囲気に慣れよう』とひたすら考えていたら、何事もなく合格できました」(30代女性)
極度に緊張している状態では、いくら自分で落ち着こうとしても、なかなか平常心を取り戻すことができないものです。そもそも運転操作に十分に慣れきっていないこともあり、一度パニックになると冷静になるのは難しいと考えられます。
なるべく落ち着いて試験を受けられるよう、技能面や知識面での不安をなくし、万全の状態で臨めるよう環境を整えておきたいところです。
ここまで見てきたように、免許を取得する過程で「強烈な思い出」ができたという人は少なくないかもしれません。みなさんは免許取得時、印象に残る出来事はありましたか?
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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