人間が落下しても助かる高さはどれくらいなのだろうか。かつて高層ビルの75階でケーブルが切れて落下したエレベーターに乗っていた女性が助かっている――。
■75階から落下したエレベーター
1945年7月28日午前9時40分、米ニューヨーク上空の濃霧の中を飛行中のB-25爆撃機が当時の摩天楼の代名詞であったエンパイア・ステートビルに激突した。
14人が死亡した大事故になったこの一件だが、80年近く経った今でも人々の注目を集めているのは、生存者の1人であるベティ・ルー・オリバーである。彼女はその日、2度の絶体絶命を切り抜けたのだ。
B-25はビルの79階に激突し、乗っていた3人とビルにいた11人が死亡した。火災は周囲のフロアにも広がったが、迅速な消火活動におかげで40分で鎮火した。消防士が鎮火した建物火災としては史上最高度の消火劇である。
エンパイア・ステートビルでエレベーター嬢として働いていたベティ・ルー・オリバーは当時20歳で、爆撃機が衝突した時、彼女が操作するエレベーターは80階で停止していた。
すぐ真下からの衝撃で彼女はエレベーターから投げ出され、燃え広がる炎で重度の火傷を負った。救急隊員が彼女のもとに到着すると、彼女は別のエレベーターに乗せられ、1階へと送られた。
隊員らはこのエレベーターのケーブルが損傷していることに気づいていなかった。動き出したエレベーターのケーブルが切れ、75階の高さから落下したのである。エレベーターのケーブルは複数ついているのだが、強烈な衝撃でどれも切れており、彼女が乗ったエレベーターはフリーフォールで落ちていったのだ。
轟音を立てて1階に落ちてきたエレベーターの中を調べた救助隊員は、まだ意識のあるオリバーを見つけて驚きながらも急いで救出した。彼女は骨盤、背中、首を骨折して満身創痍であったが、しっかりと意識を保っていたのである。
75階の高さから落ちて助かったのは奇跡としか言いようがない。この日、彼女の命を救ったのはおそらく2つの現象であると考えられている。
1つめの理由は落下の最中に狭いシャフト内の空気圧が高まり、落下の速度がかなり落ちたと考えられることだ。
2つめは切れて落ちた複数のケーブルが1階の底に溜まっており、着地の衝撃を和らげる役目を果たしたと考えられるという。また落下時に彼女がとっていた体勢も衝撃の力を身体全体にうまく分散させたのかもしれないということだ。
回復には数カ月かかったが、オリバーは完全に治癒し特に後遺症などもなく74歳まで生き永らえた。このオリバーのケースは最も長い距離をエレベーターで自由落下して生き残った世界記録となっている。
ちなみにその後にシカゴの高層ビルのエレベータが84階から落下する事故が起きたが、その際には緊急安全装置が働いて事なきを得た。
このベティ・ルー・オリバーの“奇跡”は今でも折に触れて話題となり、あらためて人々を驚かせている。高層ビルのエレベーターに乗る機会があった際、今後は彼女の話が思い出されてくるかもしれない。
参考:「IFLScience」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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