新世代モデルとしてクロスオーバーをはじめに4種類の車型を用意した「クラウン」。その中で、本流ともいうべきモデルが2023年11月に登場した「クラウン(セダン)」でしょう。このモデルに搭載されるパワートレインの内容を解説します。文・鈴木 ケンイチ/写真・PBKK

シリーズの中で、唯一のFRプラットフォームを採用
クラウンセダン エンジン

現行型の「クラウン」は、これまでのモデルと違い、セダン専用ではなく、クロスオーバーやSUVなどの複数の車型を揃えています。その中のひとつのモデルが「クラウン(セダン)」になります。それらの中で、唯一FRプラットフォームを使うのが「クラウン(セダン)」です。他のモデルはエンジンを横置きするFFプラットフォームを使っています。この点が、大きな「クラウン(セダン)」の特徴となります。

そして「クラウン(セダン)」が使うのは、「GA-Lプラットフォーム」です。これは、同じFR駆動のレクサスの「LS」などと同じものとなります。

また、「クラウン(セダン)」は、パワートレインとしてハイブリッドとFC(燃料電池)の2種類がありますが、ボディはリヤアンダートレイを作り分けることで共用となっています。

先進のハイブリッドシステム
クラウンセダン エンジン2

新型「クラウン(セダン)」に採用されるハイブリッドは、マルチステージハイブリッドシステムと呼ばれるものです。特徴は、従来のトヨタハイブリッドシステムの出力軸の後ろに、4段の変速機構を追加しています。その4段の変速に、さらに仮想変速制御をプラスして、計10段の変速制御を実現しています。ハイブリッドに4速ギヤを足して、最終的には10速ギヤのように走行するというわけです。

この模擬的な10速制御により、ローギヤ化による低速からのパワー感アップと、リズミカルな変速が実現し、ドライバーの意図に忠実な加速感を生み出すことができるようになりました。

エンジンは高圧縮比とロングストローク化された2.5リッター直列4気筒「A25A-FXS」エンジン。バルブの開閉タイミングを最適化する「VVT-iE」と、直噴とポート噴射を併用する「D-4S」、電動ウォーターポンプを使う可変冷却システムなどを採用。

システム最高出力は180kW(245馬力)、燃費性能は18.0㎞/l(WLTCモード)となります。

第2世代となったFC(燃料電池)システム
クラウンセダン11

FC(燃料電池)システムは、現行型「MIRAI」にも搭載されている第2世代。世界トップレベルの出力密度を誇るFCスタックと、3本の高圧水素タンク、大容量のリチウムイオンバッテリーなどから構成されています。

走行用に使われるモーターの最高出力は134kW(182馬力)、最大トルクは300Nm。水素の充填は3分ほどで、一充填での走行距離は約820㎞となります。

走り味を決めるAVS
クラウンセダン12

新型「クラウン(セダン)」の走り味に大きな影響を与えているのがAVSと呼ばれるサスペンションシステムです。これはショックアブソーバーの減衰力を電子制御するというもの。これにブレーキ車両姿勢制御(ロール姿勢制御)を加えることで、新型「クラウン(セダン)」は、極上の乗り心地と気持ちのよいハンドリングの二面性を実現しています。

荒れた路面では、車体の揺れを制御してどっしりとした動きに。カーブやワインディングでは、ロールを抑えます。高速道路や市街地では、サスペンションがよく動いて、細かな路面の凹凸をいなし、極上の乗り心地を実現します。

クラウンセダン13

新型「クラウン(セダン)」には、ハイブリッドとFC(燃料電離)システムという2つのパワートレインが用意されています。どちらも世界の最先端をゆく高度な技術が採用されています。