「出勤したはいいけど、作業にまったく集中できず、生産効率が落ちてしまっている」

この状態をプレゼンティーズム(presenteeism)と呼びます。

プレゼンティーズムは当然、社会的に解決が望まれる精神問題ですが、従来の調査は記憶を頼りにした聞き取りが中心だったため、その原因となる要因を特定できずにいました。

そこで大阪大学、東京大学の研究チームは今回、独自のスマートフォンアプリや身体活動量計を用いて、日々の心身状態の変化をモニタリングする新たな手法を導入。

その結果、プレゼンティーズムは「日中の抑うつ気分」「肩こりの悪化」「前日の睡眠不足」が最も大きな要因であることが判明したのです。

研究の詳細は2024年6月7日付で医学雑誌『Journal of Occupation and Environmental Medicine』に掲載されています。

目次

  • プレゼンティーズムは誰もが経験している
  • プレゼンティーズムを悪化させる心身状態を特定!

プレゼンティーズムは誰もが経験している

プレゼンティーズムは慢性的でなくとも、ほとんどの人が一度ならず経験したことがあるはずです。

例えば、やる気が出ない、集中力が続かず注意散漫になる、鼻づまりで頭がボーッとする、熱っぽい、二日酔いで体がだるいといった自覚症状から仕事のパフォーマンスが下がるケースは、すべてプレゼンティーズムに当てはまります。

プレゼンティーズムは従業員の生産性の低下により、会社全体の経済的損失の増大にもつながるため、適切に対処すべき問題です。

また専門家によると、これは頻繁に無断欠勤を繰り返す状態「アブセンティーズム(absenteeism)」よりも大きな経済的損失を生み出しているといいます。

プレゼンティーズムは会社全体の損失にもつながる
プレゼンティーズムは会社全体の損失にもつながる / Credit: canva

そこでプレゼンティーズムを予防・改善する方法がぜひとも必要になるわけですが、従来の調査ではプレゼンティーズムの客観的な評価が難しく原因が明確にならないため、効果的な改善法もいまだに確立されていません。

従来の調査は、質問票を用いて数週間または数カ月おきにプレゼンティーズムの自覚症状を「思い出してもらう」という主観的な方法に頼っていました。

これでは、思い出しのバイアスにより客観性が低下したり、評価期間がざっくりとし過ぎているため、プレゼンティーズムの発生や悪化に関係する心身状態の要因がなかなか特定できません

そこで研究チームはスマホアプリや身体活動計を用いた新たなプレゼンティーズムの調査方法を導入しました。