米テキサス州の中絶禁止法により、新生児の死亡率が13%も増加していたことが明らかになりました。
米ジョンズ・ホプキンズ大学(JHU)はこのほど、2021年に同州で成立した妊娠中絶を禁止する法律が、新生児の死亡率にどのような影響を及ぼしているかを調査。
その結果、妊娠中にすでに先天異常を患っていることが判明していた胎児や、経済的に育児が難しい家庭も中絶を禁止されたせいで、新生児の死亡率が大幅に増加していたのです。
中絶禁止法は現在、テキサス州に続いて他の14州でも可決されたため、同じことが起こるのではないかと危惧されています。
研究の詳細は2024年6月24日付で医学雑誌『JAMA Pediatrics』に掲載されました。
目次
- 先天異常あると分かっていても中絶は禁止
- 新生児の死亡率は13%も増加!
先天異常あると分かっていても中絶は禁止
テキサス州では2021年9月、胎児の心拍が検出された時点で中絶を禁止する法律(テキサス州上院法案8:SB8)が施行されました。
これにより、以前は妊娠22週目まで中絶が許可されていましたが、妊娠5〜6週目以降の中絶が事実上不可能となっています。
しかも同州法は性的暴行や近親相姦による妊娠も例外としない全米で最も厳しい内容です。
民間人が中絶措置に関わった医療関係者らを訴えることもできます。
特に注目すべき点は、妊娠中に先天異常を持っていることが判明した胎児も例外ではないことです。
天性異常(または先天性疾患)は、胎児が出生前に発症する異常や疾患のことを指します。
先天異常に伴う中絶の話題では、ダウン症(染色体異常による知的障害や身体的な特徴の問題)がよくピックアップされますが、臓器の重篤な異常など出生後の生存が危ぶまれるケースもあります。またダウン症の場合も臓器の異常など多くの合併症を伴うことがあり、出生後の生存率に大きな影響を与える場合があり、中絶が選択されることがあります。
しかしテキサス州の法律では、生まれてすぐに命を落とす危険性が高いと判断された胎児でも、出産せざるを得ない状況が発生しているのです。
またこの法律は、出生後の養育が経済的に困難な低所得者層やシングルマザーも例外とはしていません。
それゆえに同州法が施行されて以来、新生児の死亡率に大きな変化が起こっていると推測されます。
そこで研究チームは今回、中絶禁止法が施行される以前と以後で、テキサス州の新生児の死亡率がどう変わったかを調査することにしました。