失敗で落ち込むのではなく逆にギアがアップ

モドリッチのPKは、GKドンナルンマに完全にボールを見極められて止められた。精神的なショックで膝から崩れ落ちてもおかしくはない。

しかし、モドリッチは得点機を逸した直後に、精神的な空白がなく、逆にギアが上がった。プレーを続け、次の瞬間には味方のシュートのセカンドボールを狙ってゴール前に詰めていたのである。

気持ちが落ち込んで動じるのではなく、逆に集中力が上がったようにすら見えた。セカンドボールを拾ってシュートを打つというのは、プレーと集中力の連続性があってこそ生み出される。

また、こぼれ球を拾って得点するというのは、泥臭く汗をかいた者に運次第で訪れるご褒美だ。心理的に切れそうな場面で、無駄走りになるかもしれない地道なプレーにモドリッチは徹した。

どんな時もメンタルが崩壊しない。それがモドリッチの真の強さなのである。


ロブロ・マイェル(左)ルカ・モドリッチ(右)写真:Getty Images

チームメイトに魂が乗り移るカリスマ

モドリッチは60分に、勢い余ってレイトタックル(遅れたタックル)をして警告を受けた。

80分にモドリッチと交代で出場したMFロヴロ・マイェル(ヴォルフスブルク)は、その2分後に後方から挨拶代わりのタックルでイエローカードをもらった。そのプレーはモドリッチのファウルと瓜二つで、まるで魂が乗り移ったかのようだった。

言葉で説明するのは難しいが、後ろ姿から醸し出されるオーラがあり、周囲の人々を感化させるカリスマがあるモドリッチ。実力もさることながら、キャプテンマークを巻くのにふさわしい精神性の持ち主だ。

結果が伴わないクロアチアには、ベテランを外すべきという論調がある。モドリッチは大ベテランの領域だが、この試合でもクロアチア随一の高いパフォーマンスを発揮した。年齢が理由で、メンバーから外すのは見当違いである。

今後の国際大会で、もし加齢とともに調子を落として先発落ちをすることがあっても、ベンチに置いておくべき選手だ。それだけ秀でた精神力とリーダーシップの持ち主なのである。