クロアチアがまさかの先制

発煙筒がたかれ、ピッチまで漂う白い煙が妙に不気味だ。その予感が現実のものとなり、後半は風雲急を告げる。

52分、ペナルティエリア内でクロアチアのFWアンドレイ・クラマリッチ(ホッフェンハイム)が右足シュートを放つと、MFダヴィデ・フラッテージ(インテル)の伸ばした左手に当たる。クロアチア選手に取り囲まれた主審はVARでPKの判定に。

そのPKは54分、モドリッチが右足で枠の右に置きにいくように蹴ったボールをGKジャンルイジ・ドンナルンマ(PSG)が手を伸ばしセーブし、スタジアムがどよめいた。

クロアチアの波状攻撃が続き、右サイドからのボールにFWアンテ・ブディミル(オサスナ)がシュートもGKが再びセーブ。そのセカンドボールに反応したモドリッチが反転して倒れながら左足で詰めて得点。PKを外した直後のプレーで名誉挽回した。

マリン・ポングラチッチ 写真:Getty Images

クロアチアは守備が崩壊寸前に

試合はクロアチアがリードするまさかの展開。追う立場から追われる立場となり、今度はクロアチアが守りで受け止めて、イタリアがボールをキープする。

しかし、イタリアの猛攻に守備がほつれはじめ、守備が崩壊寸前のところで選手交代をしてどうにか修繕を行い、その場しのぎが続くクロアチア。一時の危機的な状況を脱しても、苦しそうなのはリードしているクロアチアの方だ。

78分には、たまらずファウルで止めたDFマリン・ポングラチッチ(レッチェ)に警告。クロアチアの余裕のなさの表れだ。

87分にはイタリアのFWフェデリコ・キエーザ(ユベントス)が右サイドから低いクロスをGKとディフェンスラインの間に入れ、触れば得点というところに途中出場のダヴィデ・フラッテージ(インテル)とFWジャンルカ・スカマッカ(アタランタ)が滑り込むが無常にも触ることができず。

提示されたアディショナルタイムは8分。イタリアは、自ら布陣を分解寸前にして攻守のバランスをいびつにする危ない賭けに出る。その隙を突いて、クロアチアが安全地帯にボールを運び、うまく時間を使う。ここはさすがにクロアチアも試合巧者だ。ベンチに退いて戦況を見守るモドリッチは、立ち上がって身体からユニフォームを剥がすと歯で引き裂かんばかりだ。

そして90+8分、イタリアのラストチャンスかというシーンが訪れた。DFカラフィオーリがピッチ中央を突進してドリブル突破すると左サイドに散らす。そのボールに途中出場のMFマッティア・ザッカーニ(ラツィオ)がダイレクトで右足を振ると、虹のように鮮やかな弧を描いたボールは白い枠の中に吸い込まれていく。あまりに劇的で、まるでスローモーションのように映った。


リッカルド・カラフィオーリ 写真:Getty Images