トレンドはプラ削減とヴィーガン食
次に、イギリスのサッカークラブでトレンド化している環境活動について取り上げよう。実はプレミアリーグに所属する全てのクラブが共通して取り組んでいることがある。それは、各スタジアムで営業する飲食店での「使い捨てプラスチックの削減」と「ヴィーガン食品(完全菜食メニュー)の提供」だ。
プラスチック削減については、近年声高に叫ばれているゴミ問題解決のための取り組みだが、ヴィーガン食品の提供は、肉食によって発生するCO2の排出量を抑えるための取り組みだ。「そこまで徹底する必要があるのか?」と疑問視する声も聞こえてきそうだが、プレミアリーグともなれば1試合に訪れる観客は相当な数にのぼる。例えば2023/24シーズンのマンチェスター・ユナイテッドでは、ホームスタジアム(オールド・トラッフォード)の平均入場者数は約7万人。それを踏まえると、スタジアムで食事する観客の多くが肉食を選択した場合、人々の声援と共に大量のCO2が排出される事態が想定される。
国際連合(UN)によると、人から排出される年間のCO2量は肉食から菜食に切り替えることで大幅に削減できるとのこと。その量はヴィーガン食(完全菜食)で最大2.1トン、ベジタリアン食(肉と魚以外の食)では最大1.5トンも減らすことができるとされている。日本のサッカークラブでも取り組みが始まるのか気になるところだ。
世界ランキング9位、環境先進国イギリス
プレミアリーグの拠点イングランドを含め、イギリス全体が環境保護に関する取り組みを先進的に行っている。2024年6月17日に『持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)』が発表した2024年版SDGs(持続可能な開発目標)の取り組み達成度ランキングで、イギリスは全167カ国中9位、日本は18位となった(1位はフィンランド)。
この結果からわかるように、環境先進国のイギリスではサッカークラブでも環境問題について取り組む姿勢や体制が自然に出来上がっている。これは「サッカーをする場所なのに発電」ではなく「サッカーをする場所でも発電」という考え方が浸透している結果だろう。
近い将来、プレミアリーグで多くのファンが熱狂するパワーを「サポーター発電」として、スタジアムを明るく照らす日が来るかもしれない。